年々採用コストや採用にかける工数が膨らみ、従来から用いている採用手法を見直したいという企業・人事ご担当者様は多いのではないでしょうか。
インターネットの普及や転職への考え方・在り方の変化に伴い採用手法が多様化する中で、自社の強みを活かした新しい採用手法を導入する企業も増えつつあります。
そのような市場下においては、最新のトレンドや求職者の動向を把握し、柔軟に自社に合った採用手法を取捨選択しなければ、人材獲得競争から取り残されてしまうでしょう。
そこで今回は、150社以上の採用をみてきた筆者が、押さえておきたい中途採用のトレンド手法の種類と特徴を紹介すると共に、企業属性ごとにマッチする採用手法も併せてお伝えします。
また最後には新しい採用手法を導入するにあたって運用に乗せるためのポイントも、意識しやすいよう2つだけに絞り記載致しました。
- 昨年と同じ採用手法で良いか悩んでいる
- トレンドと言われる各中途採用手法のメリット・デメリット・特徴を比較したい
- どのトレンドの手法が自社にマッチするのかイメージできない
上記に該当する、企業・人事ご担当者様はぜひご一読ください。
中途採用のトレンドの採用手法
まずは中途採用でトレンドに挙がっている、次の5つの採用手法の特徴やメリット・デメリットをご紹介します。
- リファラル採用
- アルムナイ採用
- ダイレクトリクルーティング
- ソーシャルリクルーティング
- ミートアップ
採用手法はトレンドの移り変わりが激しいため、候補者・応募者の意向や時代の流行を抑え、自社に合った手法を選択することが大切です。
選択肢を増やすためにも、まずはどのような採用手法が注目を集めているのか、トレンドの手法を把握しておきましょう。
リファラル採用
リファラル採用は、自社の従業員に友人や知人を紹介してもらう採用手法のことです。
エン・ジャパン株式会社が行った『リファラル採用(社員紹介)意識調査』では、既に62%の企業がリファラル採用を経験しており、企業規模や業態問わず多くの企業で導入されている手法であることが伺えます。
参照:エン・ジャパン株式会社『リファラル採用(社員紹介)意識調査』
リファラル採用は「定着・活躍のしやすさ」「採用コストの低減」「採用成功確率の⾼さ」などが期待できる手法であり、実際に導入した企業では「採用コスト削減」「ミスマッチのない採用」に魅力を感じています。
一方で「不採用による紹介者同⼠の関係性悪化」など、紹介者のケアが必要になる点にデメリットを感じる企業・人事担当者もいますが、実施済み企業の35%は、「デメリットは特にない」と回答しています。
実施済み企業は9割が今後も取り組み、未実施企業も3割が導入を検討と回答していることから、今後もリファラル採用を継続・導入する企業は増えていくと考えられます。
アルムナイ採用
アルムナイ採用は、自社を退社した人を再度雇用する採用手法のことです。
「出戻り制度」「リターン制度」「カムバック制度」などと呼ばれることもあります。
外資系企業中心に行われていた手法ですが、人材獲得競争の激化・人材の流動化加速に伴い、近年日本でも大手企業を中心にアルムナイ採用に注力する企業が増えています。
アルムナイ採用のメリットには、人材の採用・育成にかかるコスト削減や優秀な人材の確保が挙げられます。
また自社の理念・社風を理解している即戦力が戻ってくる点は、アルムナイ採用の大きな魅力ではないでしょうか。導入することで自社の組織力向上を期待できます。
筆者が採用を支援している企業の中には、アンバサダーや顧客としての関係継続を目的にしている企業もあります。
このように採用以外にも大きな恩恵を期待出来る点は、アルムナイ採用独自のメリットと言えるでしょう。
しかしアルムナイへの待遇によっては、現役社員から反感を買う可能性もあります。また「いつでも戻れる会社」というイメージ定着により、離職が加速する懸念も考えられます。
ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングとは、転職希望者が登録するデータベースの中から自社の採用したい候補者を選定し、企業側から直接アプローチを図る(スカウトメールを送る)採用手法です。
従来の求職者からの応募を待つ手法とは異なり、企業自ら働きかける「攻めの採用手法」と言われています。
新卒採用のデータにはなりますが、新卒ダイレクトリクルーティングサービスを提供する株式会社i-plugが発表したデータによると、新卒採用サービス市場が緩やかな成長を描く中、ダイレクトリクルーティング市場の年平均成長率は58.5%と他のサービスよりも顕著な成長率をみせています。
筆者の肌感覚でも中途採用でダイレクトリクルーティングを導入する企業は年々増えていると感じます。
中途採用においてもダイレクトリクルーティング需要は確実に伸びており、まさにトレンド手法の1つと言えるでしょう。
出典:株式会社i-plug
ダイレクトリクルーティングは、自社にマッチする人材を事前に選定した上でアプローチします。そのため従来の手法とは異なり、自社の求めるターゲット層にだけピンポイントで接点を図れる点が魅力です。
また自社のことを知らない候補者にもアプローチできるため、自社を知らない候補者や業界への興味が薄い人材にも興味喚起できます。
一方でただ闇雲にスカウト配信するだけでは、目に見える効果が得られにくい側面もあります。長期的な取り組み・一定のノウハウも必要になる手法です。
ソーシャルリクルーティング
ソーシャルリクルーティングは、InstagramやYouTubeなどSNSを活用した採用方法です。
拡散力が高く、活用次第では企業の認知に大きく寄与したり採用活動情報を幅広い層に届けられる可能性を秘めています。また無料で導入できる点も嬉しいポイントの1つです。
求人広告媒体などには掲載が難しい社風や従業員の様子などのソフト情報を気軽に発信できるため、採用ブランディングとしての効果も期待できます。
デメリットは、直接応募に繋げられないため、採用ページや求人広告媒体などへの誘導が必要になる点です。ファン化に繋げた後、応募に導く導線を作っておくことが肝要です。
また炎上に繋がるリスクもあります。
ミートアップ
ミートアップは、この数年で注目が高まっている採用手法です。
自社への志望度を少しでも高めることを目的に置いているため、求職者も気負わずに参加できます。
1時間程度のライトな企業説明や座談会、経営者や管理職とフランクに対話ができる食事会などのイベントが行われることが多いようです。
労力をかけず低コストで候補者と濃い接点を持てる点が魅力です。
一方で定期的な開催を行って初めて有効性が発揮される点や集客労力がかかる点に対し、導入ハードルの高さを感じる場合が多いようです。
中途採用トレンド手法に共通する4つの特徴と傾向
中途採用トレンド手法には、昔ながらの中途採用手法にはない、共通する4つの特徴・傾向があります。
先述で紹介した5つのトレンド採用手法の導入を検討している場合、次に紹介する4つの特徴・傾向を充分に理解しておくことが大切です。
<中途採用トレンド手法に共通する4つの特徴と傾向>
- 企業側が応募を待つのではなく、主体的に求職者・応募者にアプローチする
- 大衆向けではなく候補者(応募者)個人にアプローチする
- 採用ブランディングを兼ねている
- 企業知名度・ブランド力がなくても人材獲得競争で優位に立てる可能性がある
企業側が応募を待つのではなく、主体的に求職者・応募者にアプローチする
トレンドと呼ばれる採用手法の大きな特徴として、企業側が主体的に候補者・求職者にアプローチする点が挙げられます。
広告媒体のように求職者から応募を待つスタイルではないため、ブランド力や認知度が低い企業でも運用次第で大きな成果に繋げられます。
一方で企業側の能動的な運用が求められるため、従来の採用手法と比較して工数や人手が必要になります。
筆者の経験からも、導入したものの運用に手が回らず頓挫した・十分な成果を得られなかったという企業は少なくありません。
導入を検討する際は、事前にどれぐらいのリソースが必要なのか調べた上で、必要に応じて外部サービスの利用を検討するなど入念な下準備が必要です。
大衆向けではなく候補者(応募者)個人にアプローチする
大衆向けではなく候補者(応募者)個人にアプローチする点も、トレンド採用手法に共通する大きな特徴です。
企業と求職者が対等な立場に立ち、どちらも選び選ばれるという意識を持つことが肝要です。
「応募者をふるいにかける」という減点方式の採用は、時代に沿わなくなりつつあります。筆者が担当した企業においても面接官にレガシーな意識が残っており、せっかくの応募者を次の選考に繋げられないという課題が見受けられたケースもありました。
トレンドと呼ばれる採用手法の特徴からも、個人との関係性をいかに深められるかが現代採用において成功のカギとなるでしょう。
採用ブランディングを兼ねている
ソーシャルリクルーティングに代表されるように、トレンドと言われる採用手法の多くは採用ブランディングに紐づくケースが大半です。
今すぐ転職を考えている層に対してはもちろん、「ゆくゆくは転職したい」「希望条件にマッチする企業があれば転職を検討したい」という転職潜在層に対しても自社の魅力や求人情報を伝えられるため、長く運営するほど成果が高まる可能性を秘めています。
企業知名度・ブランド力がなくても人材獲得競争で優位に立てる可能性がある
トレンドに属する採用手法は、企業知名度・ブランド力がなくても人材獲得競争で優位に立てる可能性があります。
これは人材獲得競争において劣勢になりやすい中小企業や不人気企業にとって、注目すべきポイントです。
トレンド手法の多くは、知名度・ブランド力に関係なく運用次第で大きな成果を得られます。
一定の成果を得るためにも、正しい運用知識を身に着けておくことは必須と言えるでしょう。
ご紹介の通り、トレンドと言われる新しい採用手法は、企業から大勢の求職者に対し一方的に情報を発信するものではありません。
導入を検討する際は、『企業と個人』が密にコミュニケーションを図る手法へと移り変わっている旨を理解しておく必要があります。
従来からある中途採用の手法と特徴
続いて従来から利用されている採用手法についても触れていきたいと思います。
従来から中途採用に用いられている主な手法は次の通りです。
- 求人サイト
- 検索エンジン
- 人材紹介
- 自社の採用サイト など
従来の採用手法は、ご紹介したトレンドと言われている採用手法と比較して、次のような特徴を持ちます。
- 候補者1人ひとりにではなく、大勢の候補者に情報を発信する
- 企業側が受け身の(応募を待つ)状態になる
- 企業ブランド・知名度が低い企業は、成果に結びつきにくい
従来の採用手法は求職者に向けた情報発信を手軽に行えるものの、不特定多数に対し情報を発信するため、自社の求める人材から応募がないケースもあります。
また自社の魅力を求職者に伝えきれていない場合やブランド力の高い企業に競り負けている場合、応募がなかなか募らずそもそも選考を実施できないという事態も起こり得ます。
従来の採用手法で一定の成果を感じられないようであれば、時代に即したトレンドに挙がっている採用手法の導入を検討してみることをおすすめします。
企業属性別にマッチする採用手法
本項目では、様々な企業の採用を見てきた筆者が3つの企業属性ごとに、それぞれにマッチする採用手法をご紹介します。
- スタートアップ企業
- 中小企業
- ベンチャー企業
たとえトレンドの手法を導入したとしても自社にマッチしていなければ、期待する効果は得られません。
次にご紹介する企業特性と親和性の高い手法を参考に、どの手法が自社にマッチするのか比較・検討してみてください。
スタートアップ企業
これまでの常識にとらわれず、新たな価値を生み出し、過去にない斬新なビジネスを展開するスタートアップ企業には、次の手法がマッチするでしょう。
- ダイレクトリクルーティング
- ソーシャルリクルーティング
スタートアップ企業は、誰もが思いつかないような革新的なアイデアをベースにビジネスを展開するため、拡散力の強いSNSとの相性も良く、企業ブランディングや商品ブランディングに採用ブランディングを交えることもできるでしょう。
また、知名度の低い企業であってもダイレクトリクルーティングを用い、候補者に対し積極的なアプローチのもと共感を得ることが出来れば、同じような価値観を持つ『イノベーション人材』に出会うこともできるでしょう。
中小企業
中小企業にマッチしやすいトレンド採用手法は、次の通りです。
- アルムナイ採用
- リファラル採用
中小企業の中には長く安定した雇用を実現している企業も少なくありません。
しかし一方で一人人事であることも珍しくなく、採用に時間をかけられない・高額な採用費を投下できないという悩みを持つ企業も多いかと思います。
そのような企業では、既存の従業員や何らかの理由で退職したアムルナイを採用に繋げていくことで、人事担当者の負担・採用費用の削減に繋げられるかもしれません。
縦型の業務区分が行われる大企業とは異なり、多様なポジションや業務をマルチにこなす能力が求められる中小企業では協調性が重視されます。
その点、アムルナイ採用は既に自社の理念や働き方を知っている元従業員が対象となります。またリファラル採用は、従業員の紹介ということで既存社員と似た属性の候補者が集まりやすい傾向にあります。
求める人材の視点からも、アルムナイ採用・リファラル採用は中小企業にマッチしやすい手法と言えるでしょう。
ベンチャー企業
既に世に展開されている既存ビジネスモデルをベースに付加価値を加えたサービスを展開するベンチャー企業では、ミートアップとの親和性が高いでしょう。
交流会のような場で競合他社との違いを直接候補者に伝え魅力付けできれば、自社へのファン化や母集団形成に寄与します。
また余力があり採用ターゲットにマッチするようであれば、ダイレクトリクルーティングやソーシャルリクルーティングの導入を検討してみるのも良いでしょう。
トレンドの採用手法を導入し成功させるポイント
一昔前の手法とは異なり、トレンドに挙がる採用手法の多くは運営にあたり一定の知識やノウハウが求められます。「取りあえず運用すれば成果に結びつく」というものではないため、成功事例やノウハウの研究が不可欠です。
筆者の経験からトレンドの手法を導入する際は、ぜひ次の2つのポイントを意識して頂きたいと思います。
- 模範できる成功事例を探す
- ノウハウを持つ外部サービスを活用する
模範できる成功事例を探す
新しい採用手法を導入する際は、他社の成功事例を調べてみることをおすすめします。
具体的な運用を目の当たりにすることで、自社での運用イメージを掴みやすくなるでしょう。
また同業界のみならず、企業規模・地域・社員属性などあらゆる角度から模倣できる成功事例を探しておくことも必須です。
それぞれの良いところ・改善が必要なところを分析し、自社に落とし込むことで自社の採用にマッチした運用を実現できるでしょう。
ノウハウを持つ外部サービスからサポートを受ける
新しい採用手法を導入する際は、「ノウハウを持つ外部サービスからサポートを受ける」ことも視野に入れましょう。
先述の通り、トレンドと呼ばれる採用手法の多くが運用するにあたってノウハウや知見が必要になります。十分な知識を持たないまま運用を始めた場合、せっかく費やした労力が成果に結びつかず徒労に終わる懸念も考えられます。
全ての運用を自社で行うよりも、ノウハウを持つ外部サービス支援を活用することで、適切で効果的な運用が実現できるでしょう。
さらには、自社のナレッジ蓄積にも繋がります。
中途採用におけるトレンド採用手法の種類と特徴 まとめ
インターネットの普及やSNSの発達、売り手側に優位な市場、転職の在り方・考え方の変化など、様々な要因に基づき、従来の手法だけでは採用を成功に導くことは難しくなりつつあります。
中途採用においては求職者・候補者の動向やトレンドを汲み取り、自社の採用課題と照らし合わせて、最適な手法を柔軟に取捨選択していくことがより求められています。
そのためには従来の採用手法ばかりに頼らず、トレンドと呼ばれる手法にも常に目を向け、即座に取り入れていくフットワークの軽さが必要です。
まずは一度、今までの採用方法が今の自社の採用にとって適切な手法なのか見直してみましょう。その上で、より採用成功を期待できる方法を探してみてはいかがでしょうか。