多くの企業が直面するリファラル採用のトラブル | リファラル採用の課題や今後の需要も紹介

採用コストの高まりに悩む企業・人事ご担当者様も少なくないかと思います。
そんな中、低コストで自社にマッチする人材の採用が期待できる『リファラル採用』を導入する企業が増えつつあります。

しかしながら、定着や制度化の難しさから導入・運用が失敗に終わる企業は少なくありません。また時には、トラブルに発展するケースも見受けられます。
とは言え、この人材獲得競争激化の中、リファラル採用を成功させ優秀な人材を獲得している企業もあります。

今回は、リファラル採用で起こり得るトラブルや、多くの企業が直面するリファラル採用の課題についてお伝えします。
また本記事では、150社以上の採用をみてきた筆者が、実際に目の当たりにしたり見聞したリアルな事例をご紹介すると共に、解決策も併せて解説します。

  • リファラル採用を開始する上で、リスクヘッジを兼ねてトラブル事例を知りたい
  • トラブル事例からリファラル採用のTIPS(※)を研究したい
  • リファラル採用運用に伴うリスクを学びたい

上記に該当する、企業・人事ご担当者様はぜひご一読ください。
(※)TIPS:助言・ヒント・秘訣など

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【リファラル採用トラブル事例➀】紹介者と候補者の関係が悪化する

リファラル採用でよく聞かれるトラブルの1つに、紹介者と候補者の関係が悪化するケースが挙げられます。

リファラル採用とは、自社の社員が知人に自社を紹介し採用に繋げる採用手法です。
通常の採用手法とは異なり、企業と候補者の間に『紹介者』という自社の社員が介在します。
そのため企業の対応や紹介者との関わり方などから、時として紹介者と候補者の関係が悪化するトラブルが発生することもあります。

紹介者と候補者の関係が悪化する 具体的な事例

筆者がこれまで採用支援してきた企業で起こった事例をご紹介します。

紹介という特殊なルートから、候補者が「転職サイトや人材紹介等のルートより有利に選考が進む」と思い込んでしまった場合、不採用時に紹介者・候補者双方が気まずい思いをしてしまい、関係が悪くなってしまった。

また「紹介だから良い待遇で迎え入れてもらえる」という候補者の思い込みもあり、入社後の条件や待遇で揉めて辞退になるケースも珍しくありません。
その場合も、紹介者・候補者双方が気まずい思いをしてしまう可能性があるでしょう。

このように紹介者のリファラル採用への理解が甘かったり、候補者・応募者への事前説明不足から、双方が『リファラル採用=選考・待遇を優遇してもらえる』と思い込み、選考や待遇の結果から両者の関係性が悪くなるトラブルは、リファラル採用を運営するにあたり大いに起こり得ます。

紹介者と候補者の関係が悪化する事例に対する対策

【紹介者と候補者の関係が悪化する】トラブルの対策として、次の3つに取り組みましょう。

  • 選考基準・内定時の待遇が他の手法と同一である旨の周知を徹底する
  • 他の採用方法と同じ基準で選考を実施する
  • 不採用時に紹介者・候補者のフォローに注力する

本トラブルを未然に防ぐためには、選考基準・内定時の待遇が他の手法と同一である旨を周知することがポイントです。紹介者だけではなく、候補者に対しても選考フローに入る前に説明し、認識を擦り合わせておきましょう。

またリファラル採用を実施する際は、原則他の採用方法と同じ基準で選考を実施することが望ましいでしょう。
「社員からの紹介」という理由から、1次選考を割愛する・対面ではなくオンラインで実施するなど、選考フローを変更することは問題ありません。
しかし「社員からの紹介」を理由に採用基準を緩めてしまうと、リファラル採用への不信感や他社員からの不満に繋がってしまいます。

最後に万が一候補者が不採用になってしまった場合、紹介者・候補者双方が納得できる不採用理由を伝えるなどし、フォローに注力することも大切です。
採用基準を明確にし、不採用理由も納得できるものであれば、紹介者と候補者の関係が悪化するというトラブルを防ぐことができるでしょう。

【リファラル採用トラブル事例➁】社内でグループ化・派閥ができてしまう

リファラル採用は特性上、入社時点で既に人間関係が出来上がっている場合があります。
被紹介者が組織に早く馴染めるメリットがある一方で、リファラル採用が要因となり組織内部にグループや派閥ができてしまう懸念も考えられます。

社内でグループ化・派閥ができてしまう 具体的な事例

筆者が見聞した事例には次のようなケースがありました。

リファラル採用を先導してくれる社員からグループが派生し、候補者も内定後に紹介者のグループに参入。
リファラル採用を先導するグループから紹介を受けた人材の入社が増え、社内部に混乱を招くほどの派閥が派生した。

本事例がさらに悪化すると、会社の組織制度にも悪影響を及ぼしかねません。 また一度派生した社内派閥を解体することは難しく、社風・風土・組織の在り方など、あらゆる場に影響を与える可能性もあるでしょう。

社内でグループ化・派閥ができてしまう事例に対する対策

【社内でグループ化・派閥ができてしまう】トラブルの対策として、次の3つに取り組みましょう。

  • 社員全員が一丸となってリファラル採用に取り組める環境をつくる
  • 被紹介者が紹介者に依存することのないよう、他のメンバーとも馴染める環境の整備に努める
  • 他の採用手法も平行して取り組む

派閥を派生させないためには、社員全員が一丸となってリファラル採用に取り組む意識醸造がポイントです。また被紹介者が紹介者に依存することなく他のメンバーとも馴染めよう、入社後の環境整備にも努めましょう。
さらには、リファラル採用だけではなく、他の採用も平行して行うことで多様な人材が活躍できる組織を作っていくことも大切です。

【リファラル採用トラブル事例➂】紹介者へのインセンティブが法律に抵触してしまう

リファラル採用のトラブルに多い事例として、紹介者の報酬が法律に抵触してしまう、報酬が違法とみなされてしまうケースも見受けられます。

紹介者へのインセンティブが法律に抵触してしまう 具体的な事例

本トラブルの事例には、次のようなケースがありました。

リファラル採用のインセンティブについて就業規則に記載せず、従業員にインセンティブを安易に支払ってしまい、企業と従業員の双方が職業安定法第40条に違反する行為をしていると厚生労働大臣による指導(助言・改善命令・公表措置)の対象になってしまった。

紹介者へのインセンティブが法律に抵触してしまう事例に対する対策

【紹介者へのインセンティブが法律に抵触してしまう】トラブルの対策として、先述でご紹介した事例に発展しないためも、企業は次の取り組みが必要です。

  • インセンティブの額・支払条件・支払時期を就業規則に記載する
  • 従業員への周知と、行政官庁への届出を行う
  • インセンティブ金額は年収30%以下に設定する

職業安定法第30条には、下記の通りに定められています。

“有料の職業紹介事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない”

その点、リファラル採用に伴うインセンティブは、「人を紹介して得た報酬」という扱いになります。

厚生労働大臣の人材紹介許可がないのにもかかわらず、報酬を得ながら職業紹介事業を行うことは違法とみなされます。また紹介者に対して対価を支払った企業も違法性を問われる可能性があります。

先述のトラブルを回避するためにも、紹介者にインセンティブを用意する場合は、賃金や給料という位置づけで支払われるように就業規則に記載しましょう。
また就業規則を変更した場合は、労働基準法106条第1項により社員への周知と労働基準法第89条により行政官庁への届出が必要です。(※常時10人以上の従業員を雇用していた場合)

さらに、インセンティブ額にも留意が必要です。
インセンティブが高額である場合、職業紹介事業として収入を得ているとみなされ、違法性を問われてしまいます。
人材紹介で支払われるインセンティブは、内定者の年収の30%と言われています。そのためリファラル採用のインセンティブ額は、年収の30%未満の額を設定することが望ましいでしょう。

参考までにタレント獲得プラットフォーム「Myシリーズ」を運営する株式会社TalentXが公開した『大手企業のリファラル採用における報酬制度設計 中途採用編』に記載されている、リファラル採用のインセンティブ相場をご紹介します。

  • 報酬(インセンティブ)平均金額:138,722円
  • 大手企業の報酬(インセンティブ)平均金額:154,611円

職種・ポジション・活躍・在籍期間などを鑑み、リファラル採用が定着しやすいインセンティブ額を検討しましょう。

参考:株式会社TalentX『【統計レポート】大手企業のリファラル採用における報酬制度設計 中途採用編』

リファラル採用運用の課題

リファラル採用を成功させるためには、多くの企業が直面するリファラル採用運用時の課題にも目を向け、起こり得る課題への理解に努めることが肝要です。
次の3つは、筆者が採用を支援した企業の多くが直面したリファラル採用の課題です。

  • 社員に1人ひとりにリファラル採用の当事者意識を醸造できない
  • 求める人材と異なる人材の紹介が続く
  • 同じような人材ばかりが集まる

リファラル採用を導入・運用するためには、トラブル理解だけでは期待する成果を得ることはできません。
筆者の経験をもとに、リファラル採用の課題となる要因を1つずつ解説していきたいと思います。

社員に1人ひとりにリファラル採用の当事者意識を醸造できない

リファラル採用が運用に乗らない理由の1つに、社員1人ひとりにリファラル採用の当事者意識を醸造できていない点が挙げられます。
組織として制度を制定したり、リファラル採用実施の旨を周知したのにもかかわらず、なかなか紹介が得られないケースは少なくありません。
さらにはそのままリファラル採用が衰退してしまう事例も散見されます。

<対策>

社員にリファラル採用の当事者意識を根付かせるためには、次のような施策が必要です。

  • 採用部署だけではなく、社員全体でKPI/KGIを共有する
  • 社内報や朝礼など多様な場でリファラル採用を周知し、社員の記憶に定着させる
  • 社内成功事例を広める

多くの企業では、リファラル採用のKPI/KGIを全社員に共有できていません。 筆者が採用を支援した企業の中には、リファラル採用のKPI/KGIや成果を「全社(部署)で〇名の紹介・〇名の採用」と全社員に共有し、さらにリファラル採用成功事例を社内に周知することで、友人・知人を紹介しやすい風土・環境に激変させた企業もあります。

またリファラル採用を運用に乗せる際は、社内報や朝礼など多様なシーンでリファラル採用を周知し、社員の記憶に定着させる取り組みをおすすめします。

リファラル採用が頓挫する企業は、社内周知が徹底しておらず、社員に「リファラル採用」という選択肢を提供できていないケースが多い印象を受けます。
リファラル採用は軌道に乗るまで長い時間を要します。
その旨を理解し、定期的にリファラル採用の情報発信を心がけましょう。

求める人材と異なる人材の紹介が続く

リファラル採用の課題として紹介者がターゲットと異なるという課題は、多くの企業で見聞します。
このように運用軌道には乗っているものの、求める人材と異なる人材の紹介が続くと悩む企業は多いようです。

例えば営業職の募集に対しエンジニアや事務職希望の人材が紹介されたり、管理職候補の募集に対し経験の浅い若手人材を紹介される等、思い当たる企業も多いのではないでしょうか。

<対策>

本課題に対しては、次のような施策の実行が求められるでしょう。

  • 募集進捗の共有
  • 採用人材のペルソナ

突然の退職などで、急な人員補填が求められることの多い中途採用は、常に求める人材要項が変動します。今どんな人材を求めているのか、常に最新の情報を社員に共有しましょう。
共有頻度を高めることで、社員の記憶定着・当事者意識醸造にも寄与することでしょう。

また職種だけではなく、具体的にどのような人材を求めているのか、情報にペルソナ像を添えることも効果的です。とは言え、あまりにも求める人物像が具体的すぎると、紹介を躊躇ってしまう可能性も考えられます。

次の例のように、ターゲットとペルソナの間ぐらいの人物像を示すことをおすすめします。

<例>
20代・30代の営業職への就業希望者。

Must条件
・営業経験

Want条件
・BtoB営業経験あり
・リーダー経験あり

同じような人材ばかりが集まる

先述の通り、リファラル採用は、似た志向を持つ人材が集まる傾向があります。
トラブルに挙げたように、派閥が派生するほどではなくても、同じ人材ばかりが集まると、新しい発想や斬新な考え・提案が生まれにくくなるのも事実です。

組織としては、様々な人材を集め個々の能力を伸ばし、会社を発展させなくてはなりません。

<対策>

同じような人材ばかりが集まることに課題を感じている企業は、次のような点を意識してリファラル採用に取り組みましょう。

  • 社員に採用したい人物像を伝える
  • 他の採用手法とのバランスを図る
  • 多くの社員から紹介を募る

前項目の「求める人材と異なる紹介が続く」とも共通する対策ですが、社員に対し採用したい人物像の共有は不可欠です。
また他の採用手法とのバランスを図る・多くの社員から紹介を募るのも1つです。

他の採用手法から新しい志向を持つ人材を採用することで、リファラル採用で採用した人材とバランスを図ることができるでしょう。
また正社員に限定せず、アルバイト・パートなどの雇用形態の社員に対してもリファラル採用の協力を仰ぐのも良いでしょう。
正社員とアルバイト・パートでは、採用フローや選考官が異なることも珍しくありません。正社員の紹介からは得られない人材と巡り合える可能性もあるでしょう。

リファラル採用の需要

最後にリファラル採用の需要についてお伝えします。

株式会社TalentXが発表した調査データによると、2015年当時リファラル採用を実施・検討している企業は約2割しかなかったところ、2020年には約8割と急速に割合を増やしています。

また「現時点でリファラル採用制度は検討しない」と回答した企業は、2015年で6割と半数以上を占めていましたが、2020年には約1割までに大幅低下しています。

本数値から多くの企業で、リファラル採用の導入成果・効果が認められている様子が伺えます。

採用手法が多様化する中で、今後も新たな手法が展開されることも容易に予想できます。
しかし低コストでマッチ率の高い人材を獲得でき、さらには自社社員のエンゲージメント向上にも寄与するリファラル採用は、今後も衰退することなく、多くの採用現場の重要施策として運営されるであろうと考えられます。

自社で導入すべき手法か決めかねている企業もあるかと思います。
ご紹介したデータを参考に、導入するか否かぜひ検討してみてください。
参考:株式会社TalentX『【統計レポート】大手企業のリファラル採用における報酬制度設計 中途採用編』

リファラル採用にまつわるトラブル まとめ

本記事では、リファラル採用にまつわるトラブルをはじめ、運用する上で多くの企業が直面する壁や、今後のリファラル採用の需要をお伝えしました。
ご紹介の通り、確かにリファラル採用は特有のトラブルを招く懸念もあります。しかしそれはどの採用手法にも共通することでしょう。

運営する上で大切なことは、リスクを理解することと、トラブルや課題から最良の方法を導き出すことです。

リファラル採用は、採用ブランディングや自社社員のエンゲージメント向上にも良い影響を与える可能性を秘めた注目すべき採用手法です。
本記事を参考にリスクヘッジできる体制を整え、社内で周知を徹底し、自社に沿うリファラル採用の運用を実現させてください!