採用活動において多くの企業が行っているスクリーニング。
スクリーニングは、自社にマッチする人材を効率的に選別することを目的に行われます。また一口にスクリーニングといっても様々な手法があり「どの項目に該当した候補者を選別したいのか」「どんな人材だけを抽出したいのか」など、目的に応じて使い分ける必要があります。
そこで今回は、これまで150社以上の採用をサポートしてきた筆者が、スクリーニングを活用した採用課題解決やスクリーニングのメリット・デメリットをわかりやすく解説すると共に、スクリーニングを効果的に実施するコツや中途採用に用いられているスクリーニング手法などをお伝えします。
- 今のスクリーニング手法が本当に適切なのか悩んでいる
- スクリーニングを行っているが、デメリットをしっかり理解できていない
- スクリーニングを行うことで見えてくる課題を知りたい
上記に該当する、企業・人事ご担当者様はぜひご一読ください。
採用活動の悩みもスクリーニングで解決できる?!
スクリーニングの主な目的は冒頭でも述べたように「候補者を効率的にふるいにかけること」です。しかしスクリーニングで表れた数値をひも解くことで、採用活動の悩みもスクリーニングで解決できる場合もあります。
中でも次の3点は、スクリーニングで表れた数値から改善に取り組める可能性の高い項目です。
- 選考の効率化を図る
- 母集団形成の質を高める
- 就職後のミスマッチを防ぐ
採用活動において1つでも悩みを抱えているのであれば、ぜひスクリーニングで表れる数字やスクリーニングの特性に意識を傾けてみてください。
選考の効率化を図る
スクリーニングを行うことで選考の効率化を図ることができます。
面接を行う場合、面接の設定・面接官の日時調整・会場手配など様々な工数が発生します。全応募者に対し面接を実施していたのでは、膨大な時間が割かれてしまいます。
スキルや経験など自社の採用基準に満たない人材をスクリーニングしておくことで、面接すべき人材だけに時間を割けるようになります。
さらにスクリーニングによって応募者を絞り込むことで、採用意向度の高い応募者により手厚いフォローができるようにもなります。
母集団形成の質を高める
スクリーニングでふるい落とす候補者が多い場合、母集団形成が適切に行えていない可能性が考えられます。
スクリーニングでふるい落とす割合が高い媒体は、「自社の求める人材が登録している可能性が低い」もしくは「採用したい人材に魅力訴求できていない」という課題が見えてきます。
スクリーニングから見えてくるボトルネックを改善することで、母集団形成の質を高めていくことができるでしょう。
就職後のミスマッチを防ぐ
就職後のミスマッチに悩む人事ご担当者様は、スクリーニングの数値を可視化してみるのもよいでしょう。
スクリーニングには、履歴書を用いる方法の他に適性検査などが用いられるケースもあります。適性検査など数字からスクリーニングを行う場合、早期離職した人や内定を辞退した人の傾向の統計などを取ることで、似た数値の人を事前に排除することができます。
反対に社内で活躍する人材や長く務めている人材の傾向に近い数値の候補者を残す活用法もあります。
スクリーニングをするメリット
スクリーニングをするメリットは、次の通りです。
- 採用したい人材を手厚くフォローできる
- 面接の精度が高まる
- 選考をスピーディーに進められる
スクリーニングを導入するか否か迷っている企業・人事ご担当者様は、自社にとって有益性が高いのか次に紹介するメリットを参考にしてみてください。
採用したい人材を手厚くフォローできる
スクリーニングを行うことで、事前に自社の採用基準に満たない人材を振るい落とすことができます。そのため、採用したい人材にだけ時間も工数も割けるようになります。
採用したい人材を手厚くフォローできるため、選考の推移率や内定承諾率も高まることが期待できます。
面接の精度が高まる
採用の最低基準にのる人材だけを選考の場に集めることで、質の高い応募者同士を比較することができます。そのため、自ずと面接の精度も高まるでしょう。
全応募者に対し選考を行うよりも、スクリーニングを行い選考に案内する応募者を絞ったほうが、1人ひとり丁寧に選考を行えます。
例えば応募書類を隅々まで確認できる、応募者との対話の時間を長く設けられる、オンラインではなく直接会って話すなどが可能になるため、相互理解が深まることも期待できます。
選考をスピーディーに進められる
比較する候補者を事前に絞るため、応募者全員の合否結果も早く出せるようになります。結果的に応募から内定までの一連の流れをスピーディーに進められるでしょう。
1プロセスごとの合否結果を早く出せるということは、応募者に対してもスピード感のある合否結果の連絡・次回選考の案内ができるようになり、選考辞退や入社意向の減退を防ぐこともできるでしょう。
スクリーニングをするデメリット
一方でスクリーニングを行うことで発生するデメリットもあります。
スクリーニングを行うことで起こり得るデメリットは、主に次の3つです。
- スクリーニング担当者の主観が入る
- 優秀な人材・自社にマッチする人材もスクリーニングで落ちてしまう可能性がある
- 費用がかかる
費用や効果を鑑みてスクリーニングを行うことが自社の採用にとって適切なのか見極めましょう。
スクリーニング担当者の主観が入る
履歴書やアピール文章などを用いてスクリーニングを行う場合、スクリーニングを行う担当者の主観によって合否が決まるケースもあります。
なるべく担当者の主観や感情が影響しないよう、スクリーニング基準を設け、客観的にふるい分けていくよう制度を整えたりルール化しておく必要があるでしょう。
優秀な人材・自社にマッチする人材もスクリーニングで落ちてしまう可能性がある
適性検査やAI検査のように、決まった数値・指定の条件から外れた候補者が自動的にふるい落とされるスクリーニングでは、優秀な人材・自社にマッチする人材もスクリーニングで落ちてしまう懸念があります。
「面接で直接話すと魅力的に感じる人材だった」というケースも少なくありません。
採用活動にスクリーニングを導入する際は、必ずしも“スクリーニングの精度が100%ではない”というリスクを理解しておく必要があります。その上で優秀な人材・自社にマッチする人材をふるい落としてしまわないような工夫が必要です。
例えば別の角度から再スクリーニングを行う、ふるい落とされた人材の履歴書を再度確認するなどの対応を検討しましょう。
また筆者が採用を支援した企業の中には、紹介で応募した候補者や経歴が優秀な候補者に対し、一定基準の結果が出るまで何度も適性検査を受検させている企業もありました。
そうなるとスクリーニングの意義や意味が失われてしまいます。また内部や他の応募者の不信感にもつながりかねません。
スクリーニングの意味や導入の目的がブレないように留意しましょう。
費用がかかる
適性検査やAIを用いたスクリーニングでは1人ごとに費用が課金されていきます。応募が多かった場合は、想定よりもスクリーニング費用がかかる可能性も考えられます。
しかし一方で大量の応募者を事前にスクリーニングしておくことで面接に割かれる時間や工数を軽減できるのも事実です。
スクリーニングを行う際は、スクリーニングにかかる費用と面接にかかる時間・費用・工数のバランスを図るようにしましょう。
効果的なスクリーニングを実施するコツ
スクリーニングを効果的に実施するためには、次の4つのコツを意識しましょう。
- 採用基準とスクリーニング基準を混同しない
- スクリーニングしたい項目を明確にする
- スクリーニングの種類と特性を理解する
- 活躍している人材・内定に至る人材の傾向をスクリーニングに含める
筆者が採用を支援してきた企業の中には、「形式上スクリーニングしている」「目的に合ったスクリーニングができていない」という企業も少なくありませんでした。
改めて次に紹介するスクリーニングのコツを参考に、スクリーニング方法を見直してみましょう。
採用基準とスクリーニング基準を混同しない
当然ではありますが、「採用基準」と「スクリーニング基準」は同一ではありません。採用活動においては両者を使い分ける必要があります。
スクリーニングは、選考基準に満たない人材をふるい落とすことが目的です。一方採用基準は、自社にマッチする人材を見極め内定にまで導くことを目的としています。
両者を混同してしまうと、採用計画通りに採用活動を進められない状態に陥ることも起こり得ます。
ブレのない採用を実現するためにも、各基準及び採用に携わる関係者の基準を擦り合わせておきましょう。
スクリーニングしたい項目を明確にする
スクリーニングを導入する際は、何をスクリーニングの基準にするかを明確にしておきましょう。中途採用においては、人間性の他に知識・スキル・資格・年齢など、様々なスクリーニング要素があります。
どのような条件に該当する人材をふるいにかけたいか優先順位を付けることで最適なスクリーニング手法が見つかるでしょう。
スクリーニングの種類と特性を理解する
最適なスクリーニング手法を用いるためには、各スクリーニングの種類と特性を理解しておかなければなりません。
例えば履歴書の場合、人柄・資格・年齢・経歴・経験などのスクリーニングに有効です。
一方AIを用いる場合は、対人能力やポテンシャル等を図ることができるでしょう。また適性検査の場合は、基礎学力・性格・適性・能力を比較する際に効果の高い手法と言えるでしょう。
活躍している人材・内定に至る人材の傾向をスクリーニングに含める
性格・適性の数値をスクリーニングする場合、自社内で活躍している人材や、これまで内定に至った人材の傾向をスクリーニング基準に含めるのも1つの方法です。
社内で活躍している人材・内定に至る人材の傾向を把握できるだけではなく、形だけのスクリーニング・有用性を発揮しきれていないスクリーニングからの脱却を図れるでしょう。
中途採用で用いられるスクリーニングの種類
最後に中途採用で用いられているスクリーニングの種類をご紹介します。
主なスクリーニング手法は、次の5つです。
- 履歴書(エントリーシート)
- 適性検査
- バックグラウンドを調査する
- AI
- ダイレクトリクルーティング
履歴書(エントリーシート)
履歴書(エントリーシート)には、学歴・職歴などの属性情報や保有資格などが分かるだけではなく、文字の書き方や文章の構成などから応募者の人柄を把握できます。
また書面上だけでは伝わらない応募者のポテンシャルや意欲などを見極めるために、最近では録画動画や1分間のスピーチ動画を履歴書と一緒に提出を求める企業も増えてきました。
録画動画を提出してもらうことで、面接に参加しない人も合否ジャッジできる・時間と場所を選ばずにスクリーニングできるという利点があります。
書類上ではスクリーニングできず、面接の案内を差し上げてしまったものの、「結局選考基準に満たない人材だった」という事態も防ぐことができるでしょう。
適性検査
適性検査では、履歴書ではジャッジできない能力や性格を数値化できるメリットがあります。そのため、スクリーニング担当の主観や感情に依ることなく、定性的にスクリーニングを行うことができます。
しかし適性検査と一口に言っても1人あたりの受検料は500円程度~4,000円と大きな幅があります。適性検査を選ぶ際は、下記3つの基準を基に自社に合った検査を選びましょう。
〇適性検査を選ぶ3つの基準〇
<品質が安定しているか>
測定の精度・安定性が高いテストを選びましょう。
同じ人が何度受けても同じような結果が得られるテストが望ましいでしょう。
<受検者データが採用対象とマッチしているか>
意外と知らない人事ご担当者様も多いですが、多くの適性検査は、偏差値のもととなる受検者全体のデータから受検者の数値を割り出しています。
そのため、適性検査を中途採用に用いたいのにそもそもの全体の受検者データが新卒のものだった、業界的偏りが大きいとなると、正確な数値は期待できません。
<自社の採用したい人を評価できる仕様か>
どんなに精度の高い適性検査であったとしても、評価したい項目がなければ導入の意味はありません。さらには自社の採用したい人をスクリーニングできるものでなければ、利用の価値はないでしょう。
特に長く同じ適性検査を用いている企業は、『今』のスクリーニング基準に合った適性検査なのか見直してみるのも良いかもしれません。
バックグラウンドチェック・リファレンスチェック
バックグラウンドチェックとは、応募者のSNSなどのメディアを中心に友人・家族などの近辺調査を通じ、学歴・自己破産歴・事故歴・犯罪歴、さらには応募書類の虚偽などを調査することを言います。「採用調査」とも言われ、NAPBS(世界的採用調査協会)HR.comの調査によると、アメリカでは2018年時点で約95%の雇用者が採用時に実施しているとのことでした。
またリファレンスチェックは、応募者の前職関係者に応募者の勤務状況や人柄について問い合わせる調査のことを言います。エンワールド・ジャパン株式会社が行った調査によると、認知率・実施率共に下記の通りとなりました。
リファレンスチェックの認知率、外資系企業93%、日系企業73%
リファレンスチェックの実施率、外資系企業58%、日系企業23%
バックグラウンドチェックでは、事前に企業の危険因子となり得る人材をふるいにかける目的が大きいようです。またリファレンスチェックでは、応募者を良く知る第三者から意見を聞き、働きぶりや人柄が自社にマッチしているかを判断する材料にしているケースが多いようです。
AI
最近ではAIによるスクリーニングも普及しつつあります。
キーワードマッチング・アルゴリズム・採用データなどをベースに候補者をランク付けし、自社の採用基準に満たない応募者をふるい落としたり、適格な候補者を探し出したりします。
AIの活用は、スクリーニングを担当する主観や感情が介入しないメリットがある一方で、設計ミスで自社の採用したい人材がふるい落とされてしまう恐れもあります。また、企業としては、責任感のない判断になる懸念があります。
実際にAIの設計ミスで男性ばかりを優遇する仕様になっていたというトラブルもあるようです。
AIを活用する際は、本当にAIに頼ったスクリーニングでも問題ないのか、しっかり吟味する必要があります。
ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティンのように、候補者の応募前に自社でスクリーニングをかける方法もあります。ダイレクトリクルーティングでは、スカウトを送る候補者を絞った上でアプローチできるため、作業工程の中に既にスクリーニング要素が含まれています。
スカウト機能が付いた媒体に登録している候補者のレジュメを読んだ上でスカウト送付を送付するか否か決めるため、応募した候補者は既にスクリーニングされた状態となります。
応募者自身既にスクリーニングされた意識はないため、再度書類や適性検査などで他の角度からスクリーニングすることも可能です。
中途採用におけるスクリーニング効果 まとめ
中途採用におけるスクリーニングは、スクリーニングから見えてきた数値を元に採用活動のボトルネックを解消することも可能です。
そしてスクリーニングを行う際は、記事内で紹介した次の4つのコツを意識することが肝要です。
- 採用基準とスクリーニング基準を混同しない
- スクリーニングしたい項目を明確にする
- スクリーニングの種類と特性を理解する
- 活躍している人材・内定に至る人材の傾向をスクリーニングに含める
上記を改めて意識しながら、スクリーニングの目的に沿った適切な手法を用い、採用活動の施策の1つとしてより有用性・有効性の高いスクリーニングを実施しましょう。