中途採用におけるデータ分析の重要性 | 分析方法とデータ分析時の課題と対策

採用活動では、応募者対応や求人原稿作成・入稿など実務に直結する作業だけではありません。より精度の高い採用活動を実現するためには、採用にまつわるあらゆるデータを分析し、数字から課題・問題点を見つけ改善に取り組む必要があります。

データ分析の必要性については、何となく理解しこれから取り組んでいきたいと考えているものの「具体的な分析方法が分からない」「何のデータを分析すれば良いのかイメージが湧かない」という企業・人事ご担当者様も多いかと思います。

そこで今回は、これまで150社以上の採用をサポートしてきた筆者が、採用活動におけるデータ分析の重要性や分析すべき4つの採用データを解説すると共に、各データの分析方法や分析からどのような課題が浮き彫りになるのかをお伝えします。

  • 採用活動においてどのようなデータを分析したら良いか分からない
  • 各データの分析目的・活用方法を知りたい
  • データ分析を行う際に起こり得る課題を把握しておきたい

上記に該当する、企業・人事ご担当者様はぜひご一読ください。

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採用活動におけるデータ分析の重要性

まずは、採用活動におけるデータ分析の重要性について、株式会社ビズリーチが行った調査結果を用いてお伝えします。

データ分析に取り組む企業の割合

株式会社ビズリーチが企業の採用担当者に対して行った『採用業務に対する意識調査』によると、「採用活動をデータで可視化していますか」という設問に対し、次のような結果となりました。

<欲しい人材を採用出来ていると回答した企業(A群)>

  • 可視化している:31%
  • どちらかといえば、可視化している:36%
  • どちらかといえば、可視化していない:14%
  • 可視化していない:19%

<欲しい人材を採用出来ていないと回答した企業(B群)>

  • 可視化している:6%
  • どちらかといえば、可視化している:37%
  • どちらかといえば、可視化していない:35%
  • 可視化していない:22%

引用:株式会社ビズリーチ『HRMOS(ハーモス)採用管理』

データ分析の重要性

先述の調査より欲しい人材を採用できている企業(A群)のうち67%の企業が採用活動のデータ化に取り組んでいるのに対し、B群は約43%と24ポイントもの差があることが分かりました。
採用に強い企業は、データ分析に積極的に取り組んでいる実態が伺えます。

本結果から採用力はデータ分析の精度によってもたらされると言っても過言ではなく、データ分析は採用活動において重要な工程の1つであることを お分かりいただけたかと思います。

採用活動においてデータ分析が必要な理由

採用活動においてデータ分析が必要な理由は、次の通りです。

  • 行動に根拠を与える
  • 課題解決の効率化
  • ボトルネックが可視化される

行動に根拠を与える

データ分析から得られた数字は、採用活動の行動に根拠を与える術となります。

もし採用活動において何らかの課題が生じたとしても分析データがなければ、問題点やボトルネックを想像しながら肌感覚・経験則・根拠のない口コミに依りながら施策を行うしかありません。
そうなると、どんなに時間をかけても課題解決に繋がらないこともあるでしょう。
その点、データ分析をしっかりと行うことで行動に根拠が得られ、確実な改善に繋げられるようになります。

課題解決の効率化

またデータ分析は、最短ルートで解決に導く手段でもあります。

データ分析せずに課題解決や状況改善に取り組んでしまった場合、手あたり次第に施策に取り組むことになるため、解決までに膨大な時間がかかってしまいます。
また思うような成果が得られず、採用メンバーのモチベーション低下も起こり得るでしょう。

データから算出した確かな根拠をもとに、解決に向けた施策を考えることで、無駄なく最短時間で課題の解決に向けて動き出すことができます。

ボトルネックが可視化される

さらに採用活動においてデータ分析をしっかりおこなうことは、KKD(勘、経験、度胸)からの脱却機会にもなるでしょう。

筆者が採用を支援してきた企業の中でも、勘・経験・度胸を基盤に採用活動を進めている企業は少なくはありませんでした。
採用活動において適所に適切なデータを用いることで、感覚・経験ベースからデータドリブンな取り組みが可能になります。

一度データベースを構築できると、昨対比・媒体比・企業間比など様々な比較ができるようになります。たとえ採用活動に手詰まりを感じたとしても、何がボトルネックになっているのか可視化しやすくなるという利点が挙げられます。

採用活動において分析すべき4つデータ

採用活動において分析すべきデータは、次の4つです。

  • 各媒体からの応募数
  • 選考プロセスにおける推移率・歩留まり
  • 人件費
  • 採用にかかるコスト

それぞれにおけるデータの利用目的、優先度などは異なりますが、最新のデータを用い正しい方法で分析すれば、ボトルネックが可視化され、取り組むべき対策やコストバランスが明確になるでしょう。

各媒体からの応募数

各媒体からの応募数を分析することで、どの媒体が一番高い費用対効果が見込めるのか、またどの媒体が自社にとって有効性が高いのか、数値を以って可視化できます。
結果的に自社にマッチする人材を確保しやすいルートが明確になるでしょう。

<分析に必要な項目>

  • 媒体利用費用
  • 応募数
  • 内定数
  • 運営人件費
  • 運営にかかった時間

たとえ費用が安くても採用に繋がらなければ、自社にとって有効な媒体であるとは言えません。反対に費用が高かったとしても内定に繋がった候補者の数が多く、1人あたりの単価を抑えられる媒体は、自社にとって求める人材が多く登録しており、さらには自社の魅力を訴求しやすい媒体であることが伺えます。

なお、分析すべき媒体は求人広告だけではありません。
次のように、応募者の経路は多様に存在します。

  • 自社の採用サイト
  • リクルーター
  • エージェント
  • リファラル
  • ハローワーク
  • エージェントサービス
  • 説明会 など

候補者が応募に繋がる経路を全て洗い出し、各経路からの応募者数・内定者数を一元管理しましょう。媒体にかかった費用や運営にかかった時間・人件費を加味することで、各経路の効果を測定できます。

反対に自社にとって実益が少ない経路・媒体も明確になるため、必要に応じて運用を停止するという選択も取れるようになるでしょう。

選考プロセスにおける推移率・歩留まり

各選考プロセスの推移率や歩留まりの算出も採用活動において、重視されるデータです。

<分析に必要な項目>

  • エントリー数
  • 各選考の合格率
  • 各選考への参加率
  • 内定承諾者数
  • 内定承諾率 など

<歩留まり率の計算式>

歩留まり率=合格人数÷各選考プロセスの対象人数×100

分析すべき選考プロセスは、説明会やセミナーから内定承諾までです。
データ分析に初めて取り組む企業・人事ご担当者様の場合、まずは自社の選考プロセスを洗い出し、分析に必要な項目を表などに表してみると良いでしょう。
それだけでも著しく推移率が悪いプロセスや、合格率が低いプロセスが見えてくるでしょう。

推移率が悪い場合は、選考官の態度が悪い・自社の魅力を伝えきれていないといったケースが考えられます。また合格率が低い場合は、他の選考プロセスと選考基準が揃っていない可能性があるでしょう。
また内定承諾率が悪い場合は、内定者フォローが不足しているかもしれません。

このように推移率や歩留まりをデータ分析し、可視化することで課題が浮き彫りになり、次のアクションや取り組むべき施策が明確になるでしょう。

人件費

採用にかかる費用は、媒体利用費や広告費だけではありません。
採用活動を推進するための人件費も大きなコストになります。

<分析に必要な項目>

  • 採用活動に関わる各メンバーの人件費
  • 採用活動に関わる各メンバーの稼働時間
  • リクルーター社員の人件費
  • リクルーター社員がリクルーター活動に取り組む時間

採用活動に関わるメンバーそれぞれの1時間あたりの人件費と稼働時間を明確にし、各メンバーが1日あたりどれくらいの時間稼働しているのか、表などを作成し管理してみましょう。

1日・1週間・1ヶ月等、各期間にかかる人件費を計上してみると、想定以上にコストがかさんでいる可能性もあります。
余分なコストをカットすることで、採用代行や採用コンサルティングを導入する費用を捻出できるかもしれません。外部のリソースを導入することで、自社の採用活動の質を高めることも期待できるでしょう。

また本当にその作業に対し現在ほどの時間をかける必要があるのか、反対により注力すべき施策に思った以上に時間をかけられていないといった事態も把握できるでしょう。

採用にかかるコスト

人件費以外にも採用には様々なコストがかかります。

<分析に必要な項目>

  • 説明会会場費
  • イベント・セミナーの設営・出展費
  • 求人広告費
  • 採用管理ツールの利用費
  • 企業紹介用リーフレット(パンフレット)製作費
  • エージェントへの採用成功報酬
  • 懇親会費
  • 採用者の引っ越し費用
  • 説明会・面接参加者への交通費・宿泊費 など

<採用単価の計算式>

採用単価=採用コスト総額÷採用数

全てのコストを合計し、採用できた人数で割ると、そのシーズンの採用単価が算出されます。適正コストで採用できているか、確認できるでしょう。

参考までに株式会社リクルートが運営する「学生の就職・企業の採用に関する調査・研究・広報」をおこなう就職みらい研究所が作成した『就職白書2020』によると、中途採用における平均採用単価は、103.3 万円でした。

引用:株式会社リクルート 就職みらい研究所『就職白書2020』

職種・エリアにもよりますが、採用相場を基準に採用予算を定めていくのも良いでしょう。

採用活動におけるデータ分析の課題

本項目では、採用活動のデータ分析において多くの企業や人事ご担当者様が課題に感じる項目を紹介します。
特に次の3点は、筆者が採用を支援させて頂いた中で多くの企業が課題視していた項目です。

  • 人員不足により、データを整理する時間がない
  • データを有効活用するための知識が足りない
  • 分析データの効果的な活用方法が分からない

各課題について1つずつ解説していきたいと思います。

人員不足により、データを整理する時間がない

採用活動に取り組む人員が不足しており、データ分析に取り組んでみたものの、データ整理・分析に費やす時間が取れないという課題に直面する企業・人事ご担当者様も少なくありません。

効率的・効果的な採用活動を行うためには、常に最新のデータを用い、スピード感をもって分析に取り組み、施策に反映することが大切です。

同様の状況に悩む場合、以下のような取り組みを試みてみましょう。

  • 収集するデータを絞る
  • 採用代行に一任する
  • 自動化を試みる

データを有効活用するための知識が足りない

「データをどのように分析すべきかわからない」というケースも多くご相談頂きます。
データ分析は、どの数字を可視化したいのか、何を課題に感じているのかをベースに分析する項目・数字を決定します。

データを有効活用するための知識が足りないとお悩みの企業・人事ご担当者様は、前の章で紹介した、分析目的・分析方法・データ活用法を参考にしてみてください。

分析データの効果的な活用方法が分からない

せっかく分析したデータも効果的に活用しなければ、求める効果や正しい数値は得られません。また市場理解や採用経験が不足しており、知見が少ない場合、導き出したデータがどのような状況を物語っているのか分析できないケースもあるでしょう。

そのような場合、闇雲にデータを用いるのではなく、知見を有する採用コンサルティングや採用代行を利用するのも1つの手です。
もちろん導入コストはかかりますが、一時的にでも導入しデータ分析ノウハウを自社に落とし込むことがでれば、自社の力だけでデータドリブンな採用活動を実行できるようになるでしょう。

長い目でみると、高い費用対効果が得られることも期待できます。

自社の採用活動でデータ分析に取り組む方法

「データ分析に取り組む」と言っても、目的や分析データに応じて多様な方法があります。
自社でデータ分析を試みる場合は、次のような方法があります。

  • Excelやスプレッドシート
  • Googleアナリティクス
  • 採用管理ツール

自社でデータ分析に取り組む余力がない、ノウハウがないという場合は、外部にアウトソーシングする方法もあります。

目的や予算に応じて、データ分析に使用するツールを検討しましょう。

Excelやスプレッドシート

Excelやスプレッドシートでデータ分析するのも1つの方法です。普段の業務で使いなれた人が多い点や、ネット上にも採用活動用に数式が組まれたテンプレートも提供されています。

カウントできる数値さえあればデータ分析できるものの、1からフォーマットを創り上げていく必要があるため、データの入力に手間がかかる場合もあります。
また必要なデータを導き出すための知識も必要です。

Excelやスプレッドシートで
できること
・求人媒体の応募率・推移率・費用対効果の測定など
・グラフの作成
・応募者推移
・内定率・辞退率の可視化 など
Excelやスプレッドシートの
メリット
・無料で利用できる
・ネット上に無料テンプレートが提供されている
Excelやスプレッドシートの
デメリット
・可視化できるデータに整えるスキルが必要
・データ化に手間がかかる

Googleアナリティクス

Googleアナリティクスは、Googleが提供しているアクセス解析ツールです。

Googleアナリティクスに採用活動で利用しているWebサービスを登録しておくと、ページビュー数やページ別訪問数などの数値を見ることができます。
さらには、訪問回数・流入経路・滞在時間なども可視化できるため、自社で採用サイトや採用オウンドメディアを運営している場合は、Googleアナリティクスを用いてデータ分析を試みるのもおすすめです。

Googleアナリティクス
できること
・ページビュー数の把握
・ページ別訪問数の把握
・平均ページ滞在時間の把握
・訪問者の性別の把握
・訪問者の年齢の把握
・初回訪問時に見たページの把握
・訪問回数の把握
・アクセス元の把握
・離脱先の把握 など
Googleアナリティクス
メリット
・無料で利用できる
・どんな人に、どのくらい見られているか可視化できるため、ターゲットに応じたサイトに作り込むことができる
Googleアナリティクス
デメリット
・Googleアナリティクスの知識が必要
・分析できるデータが限定的

採用管理ツール

採用管理ツールは、採用活動に特化しているだけあり、主に応募者に関する情報を一元管理できます。

採用管理ツール
できること
・求人広告情報の作成・公開
・応募者情報の管理
・選考評価や内定までの進捗管理
・内定者管理
・応募者対応  など
採用管理ツール
メリット
・採用に関連するデータを一元集約・管理できる
・データの蓄積やアップロード・ダウンロードが容易にできる
採用管理ツール
デメリット
・導入費用がかかる
・管理方法をルール化する必要がある

株式会社ビズリーチが行った調査によると、「採用活動をデータで分析するために採用管理ツール(ATS)が必要だと思うか」という質問に対しては、次のような結果となりました。

<欲しい人材を採用出来ていると回答した企業(A群)>

  • 必要だと思う:37%
  • どちらかといえば、必要だと思う:29%
  • どちらかといえば、必要だと思わない:7%
  • 必要だと思わない:27%

<欲しい人材を採用出来ていないと回答した企業(B群)>

  • 必要だと思う:28%
  • どちらかといえば、必要だと思う:36%
  • どちらかといえば、必要だと思わない:20%
  • 必要だと思わない:16%

引用:株式会社ビズリーチ『HRMOS(ハーモス)採用管理』

採用に成功している企業(66%)も採用に悩む企業(64%)もどちらともに、6割以上の企業が採用活動のデータ分析のために採用管理ツールが必要と感じているようです。

採用管理ツールはデータ分析に限らず応募者の管理が適切に行われてないと悩む企業にも有用性の高いツールです。
搭載の機能を活用することで作業時間の短縮化・効率化にも繋がるため、状況に応じ自社での導入も検討してみましょう。

外部にデータ分析を委託する

外部にデータ分析を委託するのも選択肢の1つです。
データ分析ノウハウを持つ外部に委託することで、精度の高いデータ分析が期待できます。さらにボトルネックの可視化や具体的な解決策が導き出されることもあるでしょう。

しかし一方で、自社でデータ分析を行うよりも費用がかかる可能性があります。自社で対応できる分析と外部に依頼したい分析を線引きし、必要箇所のみ依頼するなどの工夫が必要です。

外部委託
メリット
・自社のリソースを使わずにデータ分析ができる
・精度の高い分析が期待できる
外部委託
デメリット
・費用がかかる

中途採用におけるデータ分析の重要性 まとめ

採用活動においてデータ分析は、採用成功を叶える上で重要な施策であることをお分かり頂けたかと思います。
ご紹介の通り、データ分析を行うことで、自社の採用課題が明確になり、改善に向けて的確な施策を行うこともできるようになります。

さらに分析データを用いてPDCAを繰り返すことで、採用成功に向けたナレッジも蓄積されていくことでしょう。
データドリブンな採用活動が実現できれば、採用力の高い活動を推進できるようになり、より自社にとって財産となる人材の採用が叶うようになるはずです。