転職エージェントサービス(人材紹介)は中途採用において多くの企業で用いられている採用手法の1つです。
しかし「転職エージェントを利用すれば、すぐに良い人材を採用できる」というわけではありません。転職エージェントは多くの企業と紹介契約を結んでいますが、転職を希望している人材、つまり紹介できる人材の数は限られています。
優秀な人材をどの企業に紹介するかは転職エージェントが決めるため、「なかなか紹介が上がってこない」と悩む企業・人事ご担当者様も多いのではないでしょうか。
さらには、転職エージェントとの担当者とコミュニケーションを図る時間がなく「採用ターゲットではない人材ばかり紹介される」と感じるケースも少なくないようです。
そこで今回は、これまで150社以上の採用をサポートしてきた筆者が、エージェントコントロールの重要性・必要性をお伝えすると共に、転職エージェントを効果的にコントロールする方法や、最近登場したエージェントコントロール(代行)サービスについてお伝えします。
- 転職エージェントの担当者と良好な関係を築けていない
- 採用したい人物像とは異なる人材ばかり紹介される
- エージェントコントロールサービスについて知りたい
上記に該当する、企業・人事ご担当者様はぜひご一読ください。
エージェントコントロールとは
エージェントコントロールとは、転職エージェントの担当者と良好な関係を築き、自社の採用したい人材を紹介してもらえるように働きかける施策です。
または、企業の採用担当者の代わりに転職エージェントとコミュニケーションを図り、自社に注力してもらえるよう取り組む代行サービスのことを指します。
「頼んでいるだけ」ではNG! エージェントコントロールの必要性とメリット
本項目では、エージェントコントロールの必要性とメリットについてお伝えします。
エージェントコントロールが必要な理由・メリットは、次の2つです。
- 自社の優先度を高めてもらうため
- ミスマッチのない紹介を増やすため
また上記理由は、採用活動の成否にも直結します。
エージェントコントロールの重要性をしっかり理解し、課題に感じている企業は改善に努めていく必要があります。
自社の優先度を高めてもらうため
売り手市場が続き採用競争が激化する現代において、ただ転職エージェントに人材の紹介を依頼するだけでは、求める人材の紹介は難しくなってきました。
株式会社マイナビが行った中途採用状況調査(2023年版)によると、利用した採用サービス・手法を問う設問では、は「転職サイト」が最多となり、「企業ホームページ」「職業安定所」「人材紹介会社」と続きました。
数ある採用サービス・手法の中でも人材紹介(転職エージェント)は上位に位置しており、多くの企業が利用している様子が伺えます。
そのため、転職エージェントとサービス契約を交わしたからといって丸投げ状態では、自社への人材紹介優先度は低くなってしまいます。
積極的にエージェントコントロールを行い、自社の優先度を高めてもらう取り組みが必要です。
ミスマッチのない紹介を増やすため
エージェントコントロールを行い、ミスマッチのない紹介を受けられるようハンドリングすることも大切です。
転職エージェントは求人条件だけではなく、社風・風土・どのような人が働いているのかなどのソフト面も加味して人材の紹介を行います。つまり、転職エージェントを活用する場合は、転職エージェントの担当者に自社のことを深く知ってもらわなければなりません。
しかし転職エージェントの担当者と密にコミュニケーションが図れていない場合、担当者が企業の様子を理解できず、また採用したい具体的な人物像がイメージできないために、結果としてミスマッチと感じる人材しか紹介されないという事態に至ってしまいます。
エージェントコントロールを行うことで、ミスマッチのない紹介が得られるようになり、採用活動も軌道に乗ることが期待できます。
自社でエージェントコントロールに取り組む時のポイント(転職エージェント活用のコツ)
冒頭でも紹介した通り、エージェントコントロールには自社で行う方法と、外部に委託する方法(エージェントコントロールサービスを利用する方法)方法があります。
ここでは、自社でエージェントコントロールに取り組む時のポイントをお伝えします。
自社でエージェントコントロールに取り組む際は、次の4つのポイントに注力しましょう。
- 採用ターゲットを明確にする
- 自社の情報を積極的に伝える
- パートナーとして一緒に取り組む姿勢を示す
- エージェント向けの説明会を開く
転職エージェントを上手に活用するコツでもあるため、ぜひ意識的に取り組みましょう。
採用ターゲットを明確にする
改めて自社で定めている採用ターゲットの条件を明確にしましょう。
筆者が採用を支援してきた企業様の中にも、採用したい人物像があやふやになっているケースは少なくありませんでした。そのような状態では、転職エージェントの担当者もどのような人材を紹介すべきか迷ってしまい、他の企業を優先してしまうことになってしまいます。
さらにただ単に、転職エージェントの担当者に対し採用条件を伝えるだけではなく、採用したい人物像のイメージをしっかりと持ってもらえるくらいに正確に伝えることがポイントです。
<例>
・20代後半の独身男性
・東京在住
・法人営業経験あり
・前職の年収は○○万円
・学生時代は運動部に所属していた
・趣味はアウトドア
またWant条件・Must条件も分けておくと、紹介の幅も広がるでしょう。
自社の情報を積極的に伝える
転職エージェントの担当者に対して、紹介時に必要となる情報をきちんと伝えられているか再度振り返ってみましょう。
下記4つの項目は、転職エージェントの担当者に伝えておきたい最低限の情報です。
- 募集要項
- 事業内容
- 経営理念
- 福利厚生
さらに選考基準や各選考プロセスでどのような選考が行われるのか伝えておくことで、転職エージェントの担当者も候補者に対して選考対策を伝えやすくなります。
また社風・風土・働く社員の人柄といったソフト情報を随時伝えることで、より自社にマッチする人材の紹介も増えてくるでしょう。
最後に紹介後、選考を受けた候補者の選考後の合否およびその理由を伝えることも忘れてはなりません。
紹介者の合否結果と理由をフィードバックすることで、次回は自社の採用したい人物像により近い人材の紹介に繋がります。さらには、転職エージェントの担当者と関係性を深めていくこともできるでしょう。
パートナーとして一緒に取り組む姿勢を示す
転職エージェントの担当者に対しては、パートナーとして一緒に取り組む姿勢を示すことも大切です。
転職エージェントは、紹介した人材が内定に繋がることで利益が発生します。
そのため、採用に積極的な姿勢を示す企業であればあるほど、転職エージェントの担当者も紹介意欲が掻き立てられます。
転職エージェントは採用成功報酬型が多いため、依頼しただけでは報酬が発生しません。そのため、転職エージェントよりも他の手法に注力してしまう企業も少なくありません。
転職エージェントの担当者の視点から「採用に積極的ではない」と判断されてしまった場合、利益に直結しにくいとみなされ、紹介の優先度を下げられてしまいます。
自社と転職エージェントとの関係性を今一度見直し、Win-Winなパートナーシップを築ける関係を創り上げていきましょう。
エージェント向けの説明会を開く
エージェントコントロールの1つとして、最近ではエージェント向けの説明会を開く企業も増えつつあります。
転職エージェント向けの説明会を開催することで、次の4つのメリットが得られます。
- 自社の魅力や事業計画の理解度を高めてもらえる
- 転職エージェントの担当者との関係性を構築できる
- 採用に積極的な姿勢をアピールできる
- 複数の転職エージェントに対し一括で情報を共有できる
説明会と言ってもオンライン会議ツールで開催すれば、割かれる時間は1時間程度です。
入社説明会や企業説明会で使用しているコンテンツをリライトした資料でも十分に活用できるため、ぜひ試して頂きたい施策です。
またオンライン説明会でも実施する時間を設けられない企業は、スライドを作成し自社と契約している転職エージェントの担当者に共有するだけでも効果が期待できます。
エージェントコントロールは、自発的なアクションが肝要です。
『エージェントコントロール(代行)サービス』とは?
“エージェントコントロール”という言葉は、自社で実施する施策そのものを指すケースもあれば、外部サービスを指す場合もあります。
エージェントコントロール(代行)サービスとは、自社の採用担当者に代わり転職エージェントとのやり取りを一括して請け負い、エージェントの戦略的活用を実現するサービスのことを言います。
依頼できる業務例は次の通りです。
- 転職エージェントから紹介された候補者の確認
- 求人票のやり取り
- 書類選考
- 選考進捗管理
- 転職エージェントの選定
- 転職エージェント向けQ&A集の作成
- 転職エージェント向け説明会の実施
- 転職エージェントの担当者とのコミュニケーション など
転職エージェントとのコミュニケーションはもちろん、転職エージェントが作成する求人票が正しい内容になっているのか、さらに応募者から見てわかりやすく記載されているかを検証してくれます。
他にも転職エージェント各社の紹介者の質や選考の推移率を可視化し、各社のパフォーマンスを検証した上で、自社にマッチする転職エージェントを選定してもらうことも可能です。
転職エージェントを活用しきれていない企業は、転職エージェント経由の採用精度を高めることで、母集団形成の質も高めることができるでしょう。
また転職エージェントで一定の採用効果を得られていた企業でも、今まで以上のパフォーマンス・成果を期待できるようになるでしょう。
エージェントコントロールサービスを利用すべき企業の特徴
続いて、エージェントコントロールサービスを利用すべき企業の特徴を紹介します。
エージェントコントロールサービスを利用すべき企業の特徴は次の通りです。
- 転職エージェントを活用するノウハウがない企業
- 転職エージェントを数字管理できていない企業
- 転職エージェントと契約したままになっている企業
上記いずれか1つでも該当するのであれば、エージェントコントロールサービスの利用を検討してみても良いかもしれません。
転職エージェントを活用するノウハウがない企業
転職エージェントを活用するためには、適切な頻度で転職エージェントが求める情報を提供しなければなりません。また自社の意向を適切に転職エージェントの担当者に伝える必要があります。
その上で転職エージェントの担当者のモチベーションを高め、自社に注力してもらう働きかけを行わなければなりません。しかし転職エージェントを活用するノウハウがない企業の場合、上手にハンドリングできず、放置状態になっている企業も少なくありません。
エージェントコントロールサービスを活用することで、自社の採用担当者がコミュニケーションを図るよりも高いパフォーマンスを期待できます。
転職エージェントを数字管理できていない企業
複数の転職エージェントと契約したものの、どの転職エージェントが一番高いパフォーマンスを発揮できているのか把握している企業は少ないのではないでしょうか。
採用活動は、採用がゴールではありません。
入社後の在籍年数や活躍なども視野に入れながら採用活動を進めていく必要があります。
エージェントコントロールサービスで転職エージェントの効果を数字管理してもらうことで、自社にマッチする転職エージェントに絞ることができます。延いては転職エージェントに割かれる無駄なコミュニケーション・労力も削減できるハズです。
転職エージェントと契約したままになっている企業
転職エージェントと契約したまま、コミュニケーションが疎かになっている企業もエージェントコントロールサービスを導入し、転職エージェントの担当者との関係性を再構築していく必要があります。
またエージェントコントロールサービスが転職エージェント担当者との窓口を担ってくれるため、人事担当者は自分にしか取り組めないコア業務に注力できるようになります。
結果として自社の採用力アップにもつながるでしょう。
エージェントコントロールの重要性と転職エージェント活用のコツ まとめ
エージェントコントロールは、転職エージェントの効果を最大限に高め、自社にとってよりマッチする人材を紹介してもらえるように働きかける施策です。
転職エージェントの活用効果を高めるためには、「成功報酬型」という転職エージェントの料金形態に着目することが肝要です。成果を創出しやすいマッチングに注力する傾向に意識を向け、企業自らが採用に積極的である姿勢をアピールしていく必要があります。
しかし企業や人事ご担当者様によっては、転職エージェントの担当者とのコミュニケーションや、採用要件・自社の現状を逐一共有することに負担を感じるケースもあるでしょう。
そのような場合は、エージェントコントロールサービスを利用するのも1つの手です。
転職エージェントが主要の採用手法となっているのであれば、改めて転職エージェントとの関係性構築に取り組んでみたり、エージェントコントロールサービスの利用を検討し、採用成功を叶える道筋を創っていきましょう。