【事例あり】採用広報が重視される理由と目的 | 手法・運用のコツ・成功事例を解説

採用広報とは、採用サイト・説明会・SNSなど様々な媒体を通じて自社の情報を発信する活動のことを言います。
情報が溢れるこの時代において、自社の魅力や採用情報は計画的かつ戦略的に、さらに適切な方法でターゲットに届けなければ、期待する成果は得られません。

採用広報の重要性を理解しつつも目の前の業務に追われ、なかなか採用広報活動に注力できない企業・人事ご担当者様も多いかと思います。

本記事では、150社以上の採用をみてきた筆者が、採用広報が重視されつつある理由を市場背景と絡めながらお伝えするとともに、手法・運用のコツ・成功事例など採用広報に着手するにあたり理解を深めておきたい情報を解説いたします。

  • 採用広報が重視されるようになった理由を知りたい
  • 採用広報を行うにあたり、意識すべきポイントを知りたい
  • 成功事例から採用広報を学びたい

上記に該当する、企業・人事ご担当者様はぜひご一読ください。

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採用広報が重視されるようになった理由

まずは、採用広報が重視されるようになった理由を、筆者の経験からお伝えします。
採用広報が重視されるようになった理由には、主に次の3点が挙げられます。

  • 採用競争激化により、多様な層・ステータスに対して情報発信が求められるようになったから
  • 情報過多により、自社メディア以外の情報発信だけではミスマッチが生じやすくなったから
  • 情報発信の多様化により、応募者の選択肢が増えたから

1つずつ詳しく解説したいと思います。

採用競争激化により、多様な層・ステータスに対して情報発信が求められるようになった

売り手市場が続く採用市場では、新卒採用・中途採用共に採用競争に拍車がかかっています。
そのため中小企業やベンチャー企業のみならず、大手企業や老舗企業も含め、求人広告や人材紹介などの従来の採用手法だけでは、求める成果が得られにくくなっています。

そこで自社や自社と同じ業界への理解が深い転職希望者だけではなく、転職潜在層や自社のことを知らない人や業界に興味がない人に対しても採用広報を通じて情報を発信することで、企業認知や応募に繋げる施策が必要になってきました。

情報過多により、自社メディア以外の情報発信だけではミスマッチが生じやすくなった

自社発信以外のメディアも情報発信のツールとして採用に活かすことは可能です。
しかし口コミサイトや比較サイトなどコントロールが難しい他メディアに情報発信を任せてしまっていると、大きなミスマッチに繋がってしまいます。

他者の発信は、自社が候補者・求職者に伝えたい内容と微妙に違うこともあり、その違いやズレによりターゲット層からの応募が遮断されてしまう要因にもなり得てしまいます。

第三者からの評価ももちろん大切ですが、「会社で働く人の様子」「風土・雰囲気」「従業員や経営者の想い」といったリアルな情報を届けたい対象に届けていくハンドル操作が必要になってきました。

情報発信の多様化により、応募者の選択肢が増えたから

情報発信の多様化により、応募者の選択肢が増えたことは言うまでもありません。
例え企業ブランド力や知名度が高かったとしてもリアルな実態が見えなければ、ターゲットに不信感を与えてしまい応募には繋がりません。
また魅力付けが弱ければ選考辞退・内定辞退にも直結してしまうでしょう。

採用広報を通じて自社の情報を発信することで、候補者・応募者の企業理解や仕事理解が深まります。また候補者・応募者の興味喚起にも寄与し、面談後から内定承諾までの期間が早まることも期待できるでしょう。

データから紐解く採用広報取り組みのきっかけ

本項目では、「共感」でマッチングを叶えるプラットフォームサービスを運営するウォンテッドリー株式会社が行った採用広報に関する調査をもとに、「何を理由に採用広報に取り組むようになったのか?」その要因をお伝えします。

ーーQ.採用広報をスタートした理由を教えてください。

  • ターゲットからの応募が集まらなかったから:28%
  • 応募数(有効応募数)が集まらなかったから:26%
  • 入社後のミスマッチが多かったから:11%
  • 募集記事の閲覧が少なかったから:10%


参考:ウォンテッドリー株式会社

半数以上の企業が『応募が集まらなかったから』と回答しています。
採用にまつわる情報の量・質ともに高度化・多様化しているため、単に募集を行うだけでは採用成功に繋がらない故に採用広報に着手した実態が伺えます。

また応募が集まらないと回答した企業の半数がターゲットからの応募が来ないと、応募者とのミスマッチを感じています。
『採用広報が重視されるようになった理由』でも挙げた内容ともリンクしていることから、現場も同一の課題・所感を持ち、採用広報に取り組んでいる様子がお分かり頂けたかと思います。

採用広報は『誰に・何を・どのように』と『PESOモデル』がキーポイント

筆者の経験から採用広報に取り組む際には、ぜひ下記2つのキーポイントを意識して頂きたいと思います。

  • 誰に・何を・どのように、を明確にする
  • PESOモデルを意識する

ただ情報を発信するだけでは、時間や工数の浪費に繋がりかねません。
筆者が支援してき他企業の中には、『誰に・何を・どのように』と『PESOモデル』を意識することで、採用広報の取り組み成果を実感した例もあります。

誰に・何を・どのように、を明確にする

誰に・何を・どのようにを1つずつ解説していきましょう。

<『誰に』情報を届けたいのか>

採用広報では、まず『誰に』情報を届けたいのかを明確にしておくことが重要です。
『誰』に情報を届けたいのかによって、社員インタビュー・事業の方針・企業エピソード・代表の想いなど、打ち出しのポイント(何を届けるのか)や打ち出す場所(どうやって届けるのか)が変わってきます。

事業戦略などをもとに『誰に』情報を届けたいのかを決めましょう。

<『何(の情報)を』届けたいのか>

続いて『何(の情報)を』届けたいのかを明確にしていきます。
ここでは、「伝える」のではなく「伝わる」ことを意識して頂きたいと思います。

例えば採用広報の一環として社員インタビューをオウンメディアに掲載する際、従業員の想いだけではなく、従業員の想いからその自社の強み・魅力を引き出し、ストーリーにリアル感や納得感を持たせることが大切です。

私が支援させていただく中でも、ストーリー性のある情報を提供することで、「インタビュー社員と話したい」「経営者のストーリーに感銘を受けた」などの声を聞くようになったと、採用広報の効果を実感した人事ご担当者様もたくさんいらっしゃいました。

<『どのように』情報を届けるのか>

採用広報では、自社の求める人材に届けたい情報をたどり着かせることが第一目的です。

インターネットの普及やSNSの浸透に伴い、情報が溢れる世において、『どのように届けるのか』をきちんと考えておかないと、ターゲットの目に触れる前に他の情報に埋もれてしまいます。

そのためにも次に紹介するPESOモデルを意識することが不可欠です。
各メディアや媒体の特性を理解し、どのように情報を届けるのかを思案しましょう。

PESOモデルを意識する

採用広報では、PESOモデルを意識することが成功を左右すると言っても過言ではありません。
PESOとは、下記4つの英単語を用いた造語です。

  • Paid Media(広告)
  • Earned Media(パブリシティ)
  • Shared Media(SNS)
  • Owned Media(自社サイト)

元々はPaid Media(広告)・Earned Media(パブリシティ)・Owned Media(自社サイト)の3つをまとめて「トリプルメディア」と呼ばれていました。今でもトリプルメディアという考え方は、広報やマーケティングに用いられることもあります。

しかし筆者の経験から採用候補においては、Shared Media(SNSやブログ)を含めた4つのメディアの特徴を踏まえ、適切に情報を発信していくことが必要だと考えられます。

<Paid Media>

Paid Mediaとは、テレビ広告などの広告枠に対して料金を払い、自社の広告を掲載するメディアのことを指します。
採用領域では、求人広告媒体に記載する例が該当するでしょう。
Paid Mediaのメリットは、多くの人に目に留まりやすく企業認知拡大と即効性がある点です。

<Earned Media>

Earned Mediaには、Shared Mediaの意味合いも含まれていましたが、PESOモデルでは、マスコミ媒体に取り上げてもらう企業の発信活動が該当します。
もしくはインフルエンサーなどコントロールできる第三者の協力を得ながらプロモーションを推進するメディアとして位置付けられています。

採用活動においては、広報・PR活動を通じたマスメディアやインフルエンサーなどの第三者による評価によって候補者・応募者に信頼の獲得を目指します。

<Shared Media>

Shared Mediaとは、Twitter・Facebook・InstagramなどのSNSに該当する拡散や共有を目的としたメディアを指します。

近年採用広報に有効性を発揮するメディアとしても注目が高まりつつあります。
安価でオリジナル性の高い情報を多くの人に発信できる点は、Paid Mediaと共通しますが、Shared Mediaの方が発信内容に縛りがなく、自社へのファン化にもつなげることができます。

即効性はShared Mediaに劣るものの拡散力が高いため、注目を集めることができれば、Shared Mediaよりも強い発信力を持ちます。
一方でアカウント炎上リスクや、思うような反応が得られないこともあります。

<Owned Media>

Owned Mediaは、自社が主導となり情報を発信するメディアのことを指します。
採用広報では、自社の採用サイトやブログなどが該当します。
Owned Mediaに訪問する人は、自社への興味・関心が高いと推察されます。
「求める人材が欲している情報は何か」を考え、企業理解を深めてもらえる情報の発信を心気ましょう。

採用広報は、様々なメディア・媒体を通じて企業情報や業界情報を転職希望者や潜在層に対して発信する活動を指します。
各メディアの位置づけと有効性を理解し、情報発信ツールと内容を取捨選択していくことがポイントです。

メディア目的媒体
Paid Media企業の認知を深めるためのメディア・求人広告
・バナー広告
・インターネット広告
Earned Media信頼できる情報を提供し
信頼獲得に繋げる
・PR TIMES
・インフルエンサー
・口コミサイト
・アムルナイ
・アンバサダー
Shared Media興味喚起を促し、
ファン獲得に繋げる
・YouTube
・Twitter
・Facebook
・Instagram
・LinkedIn
・YOUTRUST
Owned Media事業・商品・採用など
自社の魅力情報を多角的に絡め、
候補者や応募者の
企業理解を深める
・コーポレートサイト
・採用サイト

採用広報 成功事例

採用広報を成功させるためには、まず成功事例を知ることが大切です。
最後に採用広報に注力し、一定の成果を創出している企業例を紹介します。

  • freee株式会社
  • 株式会社メルカリ

今回は、多くの企業の採用を支援してきた筆者の視点から、ぜひ参考にして頂きたい2社をピックアップいたしました。
各企業の成功事例から成功要因を学び・検証し、自社に最適化した方法に落とし込んでみてください。

freee株式会社

画像引用:freee株式会社『freee採用ブログ』

freee株式会社では、採用ブログやオウンメディアからの情報発信に力を入れています。
採用ブログでは、新卒採用、中途採用双方に向けて採用情報・イベントはもちろん社員インタビューや従業員の働く様子を積極的に発信しています。

さらにfreee株式会社では『freeeの開発情報ポータルサイト』と称するオウンメディアも運営しており、社内勉強会の内容やその時に使用したスライド、登壇情報や技術情報の発信を行い、自社の高い技術力と事業魅力を伝える工夫をしています。

株式会社メルカリ


画像引用:株式会社メルカリ『メルカン』

株式会社メルカリは、メルカリではたらく人を伝えるオウンドメディア『メルカン』を運用しています。

メルカリは、採用広報の一環としていち早くオウンメディアを立ち上げ、情報を発信し続けてきました。
創業時から猛スピードで成長を遂げてきたメルカリですが、状況が日々変わる中でもメルカンを通じて、「いま」のメルカリメンバーは何を考え、何に取りくんでいるのか、課題を含めて誠実に正しく情報を届けています。

このようにメルカリへのエンパシーの声を増やしファン化を促し、未来の母集団形成に繋げています。さらに採用ミスマッチを減らすことを目的に、部署ごとの取り組みやメンバーの紹介などの発信にも注力しています。

筆者からは、全メンバーがカルチャーの担い手として当事者意識を持ち外部に情報を発信している点に、ぜひ注目頂きたいと思います。
従業員1人ひとりが個々の視点でメルカリ内部の情報を多角的に発信しており、入社後どのように働くのかが具体的にイメージできるようになっています。
従業員を巻き込み採用広報の効果を最大化しているため、メンバーを巻き込んだ採用広報の取り組みの参考にもなるでしょう。

採用広報が重視される理由を理解し、正しい方法で取り組みましょう!

採用広報は、単に情報を発信するのではなく、まずは重視されるようになった背景や各メディアの役割を理解することが肝要です。
その上で「誰」に「どんな」情報を届けたいのかを明確にした上で、自社の採用にマッチした媒体を選びましょう。

また採用広報に取り組む際は、多くの従業員を巻き込むことも大切です。社内のメンバーが外部に自社の魅力を発信したくなるような組織づくりを中心に据えることも求められてくるでしょう。
採用広報の副次的な効果として、従業員がインタビューや情報発信を担うことで自社理解が深まる・エンゲージメントが向上する・事業への当事者意識が生まれるきっかけにもなり得ます。

定着率・エンゲージメント向上ともリンクさせながら、ぜひ採用活動に取り組んでみてください。