【事例あり】注目されるスクラム採用とは?| 導入メリット・運用のコツ・成功企業例を解説

ベンチャー企業を中心に注目を集めている『スクラム採用』という採用手法をご存知でしょうか。
スクラム採用は、現場社員が採用活動の主導権を握る独特な手法です。

これまでの採用手法だけではなく、トレンドとして挙がる採用手法とも異なる特徴を持つスクラム採用ですが、「本当に効果があるのか」「現場社員に採用活動を任せても大丈夫なのか」と不安や疑問に感じる企業・人事ご担当者様も少なくないかと思います。

そこで本記事では、150社以上の採用をみてきた筆者が、スクラム採用が注目されるようになった背景を解説すると共に、導入メリット・運用のコツ・成功事例などスクラム採用導入にあたり理解を深めておきたい情報をお伝えします。

  • スクラム採用を導入することで得られるメリットを知りたい
  • スクラム採用を運用する際のポイントやコツを知りたい
  • 成功事例からスクラム採用を学びたい

上記に該当する、企業・人事ご担当者様はぜひご一読ください。

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スクラム採用とは

スクラム採用とは、株式会社HERPが提唱した採用手法です。
株式会社HERPのコーポレートサイトには、次の通りに定義されています。

“採用活動を経営陣と人事に閉じたものではなく、
現場社員を巻き込んだ形で行うことで、
最大の成果を創出していく採用手法”

画像引用元:株式会社HERP

このように人事担当者や経営者だけではなく、現場社員を巻き込み、全社員が一丸となって採用に取り組む点が「スクラム採用」の大きな特徴です。

スクラム採用が注目されるようになった背景

スクラム採用が注目されるようになった背景には、次の3つの理由が挙げられます。

  • 転職市場の競争激化により、求職者に選ばれる組織を創る必要性が高まった
  • 人事担当者の負担が増大している
  • 職種・働き方の多様化に伴い、現場が求める人物が採用されない

転職市場の競争激化により、求職者に選ばれる組織を創る必要性が高まった

一昔前と比べ、人材の獲得競争が激化し、企業は選ぶ側から選ばれる側へと立ち位置が変化しました。求職者に選ばれるためには、積極的に企業の魅力を発信していかなくてはなりません。

そのような市場動向の中では現場社員も一丸となって、自社の魅力や情報を発信していくことが求められてきています。
また現場社員に面談や選考に協力してもらい、求職者個々に寄り添った採用を実施し、求職者の入社意向醸造にも繋げていく必要があります。

パーソルキャリア株式会社が運営する転職サービスdodaが公表した、『doda転職求人倍率レポート(2023年1月発行)』によると、2022年12月の転職求人倍率は、2.54倍となりました。

職種別では、顕著に高い数字を示すエンジニアを筆頭にコンサルティング・建設などの専門職の人材不足が浮き彫りとなっており、苦戦を強いられている採用現場の様子が伺えます。
採用難易度の高い職種ほど、専門性理解が求められる傾向があり、業務のことを熟知した現場社員が積極的に採用に参加することで、採用成功を大きく高められると期待されています。
そのような期待がスクラム採用の注目を高める理由の1つです。

実際に様々な企業の採用を支援してきた筆者の経験からも、現場社員が採用活動に積極的に参入している企業ほど採用成功の確率が高い傾向にあると感じています。

出典:パーソルキャリア株式会社『doda転職求人倍率レポート(2023年1月発行)』

人事担当者の負担が増大している

スクラム採用では、広報・説明会・選考・フォローなど採用に関わる業務の一部を現場の社員が担います。
スクラム採用を導入することで人事担当者の時間や工数を確保でき、課題の検証や改善などに時間を割けるようにもなります。

パーソル総合研究所の調査では、約6割の企業が人事部の人員不足を感じている結果が出ています。

このような企業では、スクラム採用を導入することで、人事担当者の負担軽減も期待できるでしょう。さらには、採用クオリティーの向上に寄与する可能性も期待できます。

出典:株式会社パーソル総合研究所「人事部大研究」

職種・働き方の多様化に伴い、現場が求める人物が採用されない

職種・働き方の多様化に伴い、現場が求める人材が採用されないという課題が発生しています。筆者が採用を支援してきた企業の中にも、「どれだけ現場責任者とすり合わせをしてもミスマッチが生じてしまう」と悩む人事ご担当者様もいらっしゃいました。

そこで現場社員が主体となり候補者に直接アプローチできる「スクラム採用」が注目されるようになりました。
採用するポジションに精通した現場社員が採用活動をリードするスクラム採用は、求職者に対してもリアルな現場情報を伝えられるため、就職後のミスマッチ防止にも繋がります。

従来の採用手法とスクラム採用との違い

従来の採用手法とスクラム採用には、2つの大きな違いがあります。

  • 人事担当者はプロジェクトマネージャーの役割を担う
  • 現場社員に採用権限を委譲する

スクラム採用の特徴でもある各違いについて、理解を深めておきましょう。

人事担当はプロジェクトマネージャーの役割を担う

スクラム採用では、人事担当者がプロジェクトマネージャーの役割を担い、現場社員が採用活動に取り組みやすい環境を作りに徹します。
採用活動のプロとして各現場社員の司令塔となり、採用ノウハウを現場社員に伝え現場の採用力向上に努めたり、基準の調整などを行います。

従来の採用手法では、人事担当者が採用したい人物像の決定・採用チャネルの選定・選考のスケジューリング・応募者の評価などを担っていましたが、スクラム採用では人事担当者の役割が大きく変化することを覚えておきましょう。

現場社員に採用権限を委譲する

現場社員に採用権限を委譲する点も、スクラム採用の大きな特徴です。
採用権限を現場社員に委譲し、現場社員が主体となって採用活用に取り組みます。

先述の通り、人事担当者は現場社員のサポートに徹することが大切です。
スクラム採用では、現場社員と人事担当者がそれぞれの役割を理解し、各役割を明確に区分することを意識しましょう。

スクラム採用を導入することで得られるメリット

スクラム採用を導入すると、次の3つのメリットが得られます。

  • 他の採用手法とリンクできる
  • 採用成果から好循環を作りやすい
  • ジャッジ精度が向上する

上記に対し課題を感じている企業は、導入を検討してみる価値はあるでしょう。

他の採用手法とリンクできる

スクラム採用は他のダイレクトリクルーティングやソーシャルリクルーティング採用といった新しい採用手法との親和性が高く、他の採用手法とリンクさせることも可能です。

ダイレクトリクルーティングでは、従来の求人媒体などの手法では採用できないマッチ度の高い即戦力となる人材の採用にコミットできる手法です。
そのため、採用ポジションに精通した社員がダイレクトリクルーティングを先導することが望ましいと言えるでしょう。
スクラム採用とダイレクトリクルーティングをリンクさせれば、候補者に対しリアルな現場環境や働き方を伝えられるでしょう。さらには、現場の従業員が求める人物像に的確にアプローチできます。

またインターネットの普及に伴い求職者の情報収集源は、インターネット上で公開されている情報であることが大部分を占めるようになりました。
企業情報や転職情報をSNSで集める求職者も増えつつあります。
現場社員がSNSを通じて働く魅力や意義を伝えることで、母集団形成に繋がったり魅力付けされた候補者からの応募に繋がるなどの効果が得られます。

筆者もダイレクトリクルーティングやSNS発信を現場社員で運用している企業をたくさん見てきました。
既にダイレクトリクルーティングやSNS採用を運用しているのであれば、既存の手法を入口にスクラム採用を導入していくのも良いでしょう。

採用成果から好循環を作りやすい

スクラム採用された新入社員は、採用活動への参加意欲が高い傾向にあります。
そのためスクラム採用は1度土台を形成できれば、社員が主体的に採用活動に参加する風土を定着させられるでしょう。

さらには、現場社員が自社の魅力を再確認する機会にもなります。
求める人材獲得に向けて組織が一丸となって協力し合うことで、社員のエンゲージメント向上にも繋がるでしょう。

ジャッジ精度が向上する

スクラム採用のメリットの1つに、ジャッジ精度の向上が挙げられます。

スクラム採用は、採用ポジションについて理解の深い社員が選考や魅力訴求を行います。
つまり現場や業務内容の理解が薄い人事担当者が採用ジャッジを行うことで発生するミスマッチを防ぐことができます。
結果として早期離職の防止や、早期に活躍できる人材の獲得が叶うようになります。

また求職者に現場で起きている課題からの活躍期待や、担ってもらいたいミッション・役割を適切に伝えることができます。
そのため、求職者にとっても「いかにマッチしているのか」を実感してもらいやすくなります。

他にも人事担当者の負担が軽減される、全社員が一丸となって採用に取り組む風土が定着するなどのメリットも得られるでしょう。

スクラム採用を成功させるコツ

スクラム採用を成功させるコツは次の3つです。

  • 情報を一元管理し、管理方法のルールを定める
  • 個々の役割を明確にする
  • スクラム採用の必要性・意識の認知を徹底する

スクラム採用は現場社員が主体となり、組織が一体となって採用活動に取り組む採用手法です。採用活動に関わる人数が多くなるため、ただ漠然と取り組むだけでは目に見える成果は得られません。

本項目で紹介する成功のコツを意識しながら、スクラム採用の設計・運用を進めていきましょう。

情報を一元管理し、管理方法のルールを定める

スクラム採用では人事担当者と現場社員でデータの二重管理にならないように注意しなければなりません。

人事担当者と現場社員の持つ情報が1つのデータベースで管理できるように体制を整えることはもちろんですが、情報の反映や閲覧などにおいても適宜ルールを定めておくとスムーズな管理が叶うでしょう。

個々の役割を明確にする

スクラム採用では、従来の採用手法と人事担当者の役割が大きく異なります。
先述の通り人事担当者の役割は、採用活動のマネジメントとコントロールです。母集団形成や選考、フォロー・クロージングなどの各プロセスにおける設計や整備を担います。

一方で現場社員は、候補者へのアプローチやイベントの規格や登壇、面接など各採用プロセスにおける設定・運用を担います。

現場社員の中でも部署ごとに採用リーダーを置き、組織的に採用活動を進めることがポイントです。

スクラム採用の必要性・意識の認知を徹底する

スクラム採用を導入する際は、従業員にスクラム採用の必要性を理解してもらわなければなりません。またスクラム採用に積極的に取り組むためには、従業員の意識形成も欠かせないでしょう。

そもそもスクラム採用の必要性を従業員にしっかり理解させられていない場合、スムーズに運用することはできません。期待する効果が得られないばかりか、「現場の負担が増す」と社員の不満に繋がってしまいます。

常に適切な情報・目標・成果の共有を忘れず、一体的な活動を築き上げる取り組みが必要です。

スクラム採用 成功事例

最後にスクラム採用を導入し、一定の成果を創出している企業例を紹介します。

新しい採用手法を導入するには、成功事例を知ることが大切です。
自社への導入や運用に向けて、成功事例を確認しておきましょう。

日本マイクロソフト株式会社


画像引用元:日本マイクロソフト株式会社 キャリア採用ページ

日本マイクロソフト株式会社は、2016年にダイレクトリクルーティングモデルをスタートしました。
ダイレクトリクルーティングモデルでは、現場のマネージャー・採用チーム・HRBPの3者が連携し、採用活動を行っています。

特にリファラル採用・SNS採用・ダイレクトリクルーティングに注力しており、現場社員が潜在候補者にアプローチする機会を意図的に増やし、よりスピード感を持って魅力訴求に繋げていくことを大切にしています。
さらに社員には、常にマイクロソフトに可能性のある人材紹介を求めるなど、社員が多角的に採用活動に関われる環境作りを意識しています。

共和電気工業株式会社

画像引用元:共和電気工業株式会社 採用情報ページ

続いて中小規模の企業にぜひ参考にしていただきたい事例を紹介します。

共和電気工業株式会社は、石川県に本社を構える社員数250名規模の企業です。
地方かつ企業規模も大きくない会社ですが、2018年には7名(うち大卒4名)、2019年には6名(うち大卒2名)の採用に成功しています。
さらに女性からの人気が低い業界であるにもかかわらず、女性の採用獲得実績もあります。

同社がスクラム採用を開始したきっかけは求人広告だけでは限界を感じ、新たな取り組みを早急に打ち出さなければならなくなったという背景があります。
自社の採用の在り方を変えるため、総務一任だった体制を多くの部署・社員が協力し、全員で採用活動に取り組める新しい体制へと変革しました。

また採用活動には若手社員の意見を積極的に取り入れ、説明会や面談では配属予定部署の上長が登壇し、採用予定ポジションについての魅力や働き方を直接求職者に訴求する取り組みを行っています。
このように多くの社員が関わる体制を創り上げたことで、柔軟かつ丁寧に求職者対応を行い採用成功に繋げています。

参考:中部経済産業局『採用力強化 ガイドブック』

スクラム採用 まとめ

スクラム採用は、自社の従業員が一体となり採用活動に取り組む手法です。
採用の主導権は現場社員が握り、人事担当者はフォローに徹するという、これまでの採用手法とは、性質が大きく異なります。

人事担当者は採用活動における立役者となり、採用成功に向けて地道に業務に取り組む必要があります。また「採用は人事担当者や経営者などの採用チームが行うもの」という認識を一新しなければなりません。

理解や意識醸造までに長い時間と多大な労力が必要になりますが、スクラム採用を定着させることで組織に大きな恩恵が得られることも確かです。

スクラム採用には、“求める人材に出会える強み”があります。スクラム採用の魅力・重要性を現場社員にも理解してもらい、社員全員で採用活動に取り組むことでより強固な組織を創り上げていくことが出来るでしょう。

さらには、エンゲージメントが向上し現場社員の積極的な採用活動への参入といった好循環を派生させることができれば、この採用難時代でもより有能な人材獲得を叶えられるでしょう。