中途採用における採用CXの重要性と推進のコツ | 採用CXにおける3つのNG行動も解説

売り手市場が加速する中途採用において、企業は候補者を選ぶ側から選ばれる側に移り変わりつつあります。優秀な人材を獲得するためには、ただ求人を公開する・選考するだけでは期待する成果は得られなくなりました。

採用マーケティングや採用ブランディングに注力する企業が増える中、近年『採用CX』が重視されているのをご存知でしょうか。しかし採用CXに対する考え方や取り組みが定着していない企業がまだまだ多いのも事実です。
そのため、「“採用”に“CX”を落とし込む具体的なイメージが湧かない」「どのように取り組み始めたら良いかわからない」と悩む企業・人事ご担当者様も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、これまで150社以上の採用をサポートしてきた筆者が、今注目集まる『採用CX』について解説したいと思います。
本記事では、採用CXに取り組む価値や必要性の理解を深めていくことができるでしょう。

  • 採用CXがなぜ重視されているのか知りたい
  • 採用CXに注力しなかった時に生じるリスクを理解しておきたい
  • 採用CXを向上させるための取り組みを知りたい

上記に該当する、企業・人事ご担当者様はぜひご一読ください。

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採用CXとは何か

『採用CX』とは、文字通り“採用”と“CX”を組み合わせた造語であり、「候補者体験」を意味します。

CX(Candidate Experience)とは、元々「顧客体験(顧客体験価値)」を意味するビジネス用語です。顧客が商品・サービスを購入する際に得た体験や利用時に感じる「価値」を指します。

採用領域においては、候補者の企業認知から選考終了までの全てのプロセス(タッチポイント)一つひとつで価値を提供し、候補者に「この企業に出会えてよかった」と採否の結果に関わらず感じてもらえることが指標となります。

候補者の採用CXを向上させることで、自社へのファン化や採用力向上を図ります。

中途採用における採用CXには「どんな価値がある?」「なぜ必要?」

本項目では、採用CXについての事前理解に向けて、採用CXの価値や必要性を次の3つの項目に分けて解説します。

  • 採用ミスマッチ・早期離職の防止が期待できる
  • タレントプールの構築に寄与する
  • インターネット普及に伴い、採用情報がオープンになっている

採用CX向上に取り組むためには、まず中途採用における採用CXの価値と必要性の理解を深めましょう。

採用ミスマッチ・早期離職の防止が期待できる

後にも紹介しますが、採用CX向上に取り組む際は、候補者の話をじっくり聞き、求める意見・回答を提供することが第一歩です。さらに候補者の期待を上回る価値や情報を提供することを目指します。

形式上の面接や企業が候補者を選定する一方的な選考では得られない、候補者との時間・コミュニケーションを作ることが大切です。候補者からの質問に対し、企業の特色・魅力を交えて真摯に回答することで候補者の企業理解が深まり、さらに入社意向が向上します。

企業や仕事の理解を深めながら最終選考へと進んでいくため、採用後のミスマッチが生じることも少なくなります。また十分に入社への意向度が高まった状態で内定に至るため、内定辞退や早期離職の懸念も最小限にとどめることができるでしょう。

タレントプールの構築に寄与する

採用CX向上は、自社のファンを増やすことにもつながります。例え応募に至った候補者が最終的に他社を選んだとしても、候補人材を管理するデータベースである「タレントプール」の構築が進みます。

少子高齢化に伴い、今後も採用難の時代は継続すると考えられます。そのような状況下だからこそ、タレントプールは今後の中途採用に向けて築いておきたい採用財産です。

採用CX向上の取り組みは、中長期にわたり自社の採用力強化も図れる施策と言えるでしょう。

インターネット普及に伴い、採用情報がオープンになっている

インターネット普及に伴い、採用情報がオープンになっていることも採用CXの注目が高まる理由の1つです。

インターネット普及に伴い現社員や退職社員が投稿する口コミサイト・SNS等の登場により、多くの人が転職活動の取り組みも投稿するようになりました。

エン・ジャパン株式会社が運営する『人事のミカタ』によると、転職活動者が企業研究を行なう際、「口コミサイトや口コミ検索で企業を調べる」という回答が71%でした。
さらにたった2年で10ポイント以上も上昇している上昇率の高さにも注目すべきでしょう。


引用:エン・ジャパン株式会社『人事のミカタ』

インターネットの普及に伴い情報がオープン化しているだけではなく、多くの候補者・応募者が企業選びのための情報ツールとして口コミサイトを活用しています。

さらに株式会社マイナビが行った『採用辞退に関する実態調査』では、一次面接前の段階で選考を辞退した理由に「Webサイトの企業評価や口コミ情報をみて、希望に合わないと思った(20.3%)」が2位に位置しています。


引用:株式会社マイナビ『採用辞退に関する実態調査』

またエン・ジャパン株式会社が行った『選考辞退についてアンケート調査』でも、面接前に選考を辞退した理由として「ネットで良くない口コミを見たため(22%)」が2位に位置しました。

引用:エン・ジャパン株式会社

口コミを見たことで選考を辞退することも大いにあり得ることをお分かり頂けたかと思います。

情報の透明化をネガティブに捉えるのではなく、採用CXを通じてポジティブなコメントを増やすことができれば、自社の採用ブランディング向上も期待できるでしょう。

採用CXに注力しなかった時に生じる懸念

一方で採用CXに注力しなかった時に生じる懸念を3つお伝えします。

  • 選考推移率の低下
  • 企業イメージの低下
  • ネガティブな口コミの拡散

採用CXの取り組みは、一朝一夕に成果が現れるものではありません。
しかし取り組まないことに対し、リスクが生じるのも然りです。
ここで紹介する懸念に対し、自社にどれだけの損失・マイナスがもたらされるのか思案してみましょう。

選考推移率の低下

ただ応募者の合否だけを決める選考の場合、選考の推移率が低くなる可能性が考えられます。

採用CXでは、プロセスごとに候補者の企業理解を深め自社への興味・関心や入社意向を高めていきます。このような工程がない場合、応募者には入社意欲を高められるタイミングがなく、次の選考に進む意義が感じられなくなってしまいます。

結果的に選考辞退に繋がり、選考の推移率が低下してしまいます。

企業イメージの低下

選考時の応募者対応はそのまま企業イメージにも直結します。

選考時の対応によっては、面接官や選考に対する印象だけではなく、企業イメージの低下にも繋がりかねません。
延いては企業のビジネスにも大きな影響を与える可能性も考えられるでしょう。

面接官の対応や選考のやり取りが口コミサイトに投稿されるケースは少なくありません。しっかり採用CXに取り組んでいれば、そのような懸念は生じ得ないでしょう。しかし採用CXに取り組んでいない場合は、このようなリスクをはらんでいることも理解しておく必要があります。

ネガティブな口コミの拡散

選考時に抱いたネガティブな印象が口コミサイトに投稿されるリスクも考えておかなければなりません。SNSなどで拡散されれば、その影響はさらに大きくなってしまうでしょう。
採用CXに取り組めていない企業は、候補者への態度・応対に対し、正しい理解・認識を持てていないメンバーも一定数います。

採用CXへの取り組みを通じて面接官のマインド醸造や人事の応募者へのモラルある対応が教育されていないのであれば、ネガティブな口コミが投稿され・拡散されるリスクも十分考えられるでしょう。

候補者・応募者に採用CXを届けるための6つのポイント

続いて、候補者・応募者に採用CXを届けるためのポイントを6つ紹介します。

  • 候補者・応募者アクションに対する迅速な反応・質の高い対応
  • リクルーター制度の導入
  • カジュアル面談の実施
  • 候補者の意見を尊重し納得感与える
  • 候補者・応募者にとって学びの時間・場にすることを意識する
  • 不合格の理由を伝える

すぐに全ての施策に取り組める企業は少ないかと思います。しかし中には比較的簡単に導入できる施策もあるでしょう。
まずは導入しやすい施策を模索してみましょう。

候補者・応募者アクションに対する迅速な反応・質の高い対応

候補者・応募者のアクションに対する迅速な反応・質の高い対応は、採用CXの向上を大きく左右すると言えるでしょう。

PR TIMESが実施した『カスタマーサポート調査』では、問い合わせをした人の51%が1時間以内の返信を想定しているという結果になりました。

さらに問い合わせの満足度に応じた利用頻度の割合は次の通りとなりました。

  • 対応品質の満足度が高かった場合 ⇒サービスの利用頻度があがった:30.7%
  • 対応品質の満足度が低かった場合 ⇒利用頻度が下がった、もしくは利用しなくなった:65.9%

本調査では「問い合わせ対応は、満足度を高める品質の高い対応と同時にスピーディーな対応が求められる」と分析されています。

引用:PR TIMES『カスタマーサポート調査』

同調査は、採用にフォーカスした調査ではありませんが、採用CXも同様の傾向が現れると考えられるでしょう。応募者からのアクションに対し少なくても1営業日以内の対応と丁寧な対応が採用CXを向上させます。

リクルーター制度の導入

併走型で候補者の転職をサポートするリクルーターの存在は、採用CXにおいて大きな効果を発揮すると期待されます。候補者に対しリクルーターが付くことで、人事担当者の手の届かないところもフォローが可能になります。

またリクルーターを通じて自社理解の解像度向上も図ることができるでしょう。リクルーターがキャリア・企業理解の解像度を明確にした上で選考に臨むマインドを醸成しているため、高い選考推移率が期待できます。

カジュアル面談の実施

リクルーター面談の実施が難しい企業は、カジュアル面談に注力するのも1つです。

カジュアル面談では、候補者の気持ちや意志に寄り添う姿勢を持ち、候補者の意見を聞き出すことに重きをおきましょう。

候補者がカジュアル面談に臨む理由や目的は1人ひとり異なります。冒頭の10分間は傾聴に近い形でしっかりと話を聞き、転職に何を求めているのか分析しましょう。
転職に求めているものが自社で叶えられるのであれば、自社の魅力や選考の意図をしっかり伝え、選考に臨む価値を理解してもらうよう務めましょう。

反対に自社で叶えられないことを候補者が望んでいる場合は、包み隠さず実現が難しい旨を伝えるのも1つの方法です。「しっかりと気持ちを受け止めてくれた」「意見を傾聴してくれた」という候補者の体験は、採用CXを向上させる基盤となるでしょう。

候補者の意見を尊重し納得感与える

採用を成功させるためには、いかにビジョンや理念に共感してもらうかがポイントになります。

そのため、候補者が他社と迷っている場合は、迷っている会社と自社との違いを言語化し、一緒に整理をしてみましょう。その中で候補者に最も満足度の高い選択をしてもらうことで、最終的に自社に入社しなかったとしても高い採用CXを実現できるハズです。

候補者・応募者にとって学びの時間・場にすることを意識する

候補者・応募者にとって学びの時間・場にすることを意識することも重要です。

特に課題提出やグループ面接の場合、ただ合否を伝えるのは避けましょう。候補者がフィードバックを受けて成長できる場にしていくことが肝要です。

多くの企業は、つい課題に対してのダメ出しや、グループ面接においても他の候補者と比較した上でのネガティブポイントばかりを伝えがちです。マイナス面ばかりではなく、相手の強みやポジティブポイントを引き出し、より候補者が自分を高められるようなフィードバックを意識してみましょう。

不合格通知を受け取った選考になったとしても、候補者にとって学びある時間となれば採用CXは向上するでしょう。

不合格の理由を伝える

不合格の場合は、不合格になった理由や背景を丁寧に伝えましょう。

不合格になった理由や背景を伝える時は、候補者に納得感を与える内容であることが必須です。候補者が納得できれば、候補者自身も学びとなり次回選考に活かせる経験となるでしょう。延いては候補者の採用CX向上に繋がります。

採用CXの価値の低下を招く3つのNG行動

最後に採用CXの価値の低下を招くNG行動を3つ紹介します。

  • 不合格の理由を伝えない
  • 流れ作業で対応・選考を進める
  • 一方的に意見を伝える

どれも採用CXの低下に繋がり、候補者の入社意向や企業イメージを低下させてしまうものばかりです。採用繁忙期などにおいても同様の対応に陥っていないか、採用に関わるメンバー同士でセルフチェックに取り組みましょう。

また応募者インタビューを行うのも1つの方法です。
社内では分からない候補者の気持ちを、実体験を通じた応募者からヒアリングすることで、次回以降の採用CX施策に落とし込んでいけるでしょう。

不合格の理由を伝えない

筆者が採用を支援した企業様の中でも、候補者の方に不合格になる理由を伝えていない企業様が散見されました。

選考プロセス初期の場合、全ての候補者に対し、不合格理由を伝えられないこともあるかもしれません。しかし何度か面接・面談を重ね候補者と関係性が出来ているにもかかわらず、採用に至らなかった理由を明確にしなかった場合、候補者からの信用・信頼を著しく低下させてしまいます。

各プロセスで候補者の採用CXを高められたとしても、最後のコンタクト1つでこれまで取り組んできた採用CXが無駄になってしまうかもしれません。

不合格を伝える際は、最後まで候補者と向き合うことが肝要です。

流れ作業で対応・選考を進める

採用競争が激化する中、候補者1人ひとりに対し丁寧なコミュニケーションを図る企業が増えてきました。また候補者も自身の転職動機を満たす企業なのか見定めるため、企業としっかりコミュニケーションを図るようになっています。

そのような変化がある中、流れ作業で対応・選考を進めるといった一昔前の方法では候補者の採用CXを満たすことはできません。

選考推移率が低い企業や内定辞退が多い企業は、今一度選考や応募者対応を見直してみましょう。

一方的に意見を伝える

候補者と相対した時、企業からの一方通行のコミュニケーションになっていませんか。
確かに限られた時間・場の中で「自社にマッチする人材か」「魅力的な人材か」を図りたくなる気持ちは分かります。

しかし一方的に質疑を繰り返された候補者は、フラストレーションがたまる一方です。「せっかく企業の人と会ったにもかかわらず、有益な情報や体験が得られなかった」という心境になってしまうでしょう。

候補者とのタッチポイントとなる場は、双方にとって有意義だったと感じられる場にしていく取り組み・姿勢が大切です。

中途採用における採用CXまとめ

候補者に「この会社の選考を受けて良かった」と感じてもらうためには、候補者に気付きを与えたり成長を実感できる体験を提供することがポイントです。

それを実現するためには、選考時の内容や応募者の対応を見直すことも必須です。そして何よりも、熱意を持って候補者と向き合うことが肝要と言えるでしょう。
どれだけ候補者に対し、親身になって寄り添うことができるのかが採用CXの成否を左右します。

採用CX向上を図りたいという企業は、候補者との距離・向き合い方にも意識を向け取り組んでみてください。