採用活動におけるKPI設定の効果&設定時・運用時の注意点とポイントを解説

KPIとは、企業や組織が事業の目標を達成するための1つの手段として設定される『行動指標』です。もちろん採用活動においてもKPIを設定し、いくつもある採用プロセスを数字で管理していくことが求められます。

本記事では、採用活動におけるKPI設定の必要性やKPIを設定することで得られる効果や設定方法、注意点などKPIに関する疑問について網羅的に解説します。

  • 感覚的な採用から脱却したい
  • 採用におけるKPIの設定・運用方法を知りたい
  • どのプロセスのKPIを重視したら良いのか分からない

上記のような悩みや疑問を持つ企業様・人事ご担当者様はぜひご一読ください。

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KPIを設定することで得られる効果

採用活動をする際にKPIを設定することで、主に次のような4つの効果が得られます。

  • 採用活動における課題を数字から把握できる
  • 無駄を排除し、採用業務の効率化及び質の向上を図れる
  • 次採用の参考値になる
  • 費用対効果の改善が期待できる

採用活動における課題を数字から把握できる

KPIを設定することで、採用活動を数字で管理できるようになり、採用活動における進捗や改善すべき項目が可視化されます。

筆者が採用活動をお手伝いした企業様の中には、「KPIとして定めた数字になぜ届かないのか?」を共に分析・課題を可視化し軌道修正することで、少しずつ採用の成功率向上に繋げた成功事例もあります。

未だ採用現場の実情として、経験・口コミ・感覚を頼りに採用活動を運用しているケースが散見されます。
勘・経験・度胸さらには人事仲間の口コミだけに頼るのではなく、KPIを定め感覚的な採用活動からの脱却を目指しましょう。

無駄を排除し、採用業務の効率化及び質の向上を図れる

KPIを設定することで、定めた数字に対して最短ルートで達成し得る選択肢が絞られます。
その中で自社のニーズにマッチするルートを選択することで、自社の求める人材を採用できる確率が高まるでしょう。

次採用の参考値になる

例えKPIを達成できなかったとしても確実にデータを残しておくと、次の採用活動の目標を設定する際の参考値として引用することができます。

また「なぜ達成できなかったのか」「どんな戦略であれば達成できたのか」を振り返ることで、次の採用ではより効果的な戦略・手法・計画を選択・立案できるでしょう。

費用対効果の改善が期待できる

適切にKPIを設定しKPI達成のために採用活動を推進していくと、採用にかかる費用を抑えられる可能性もあります。

例えば採用に必要な母集団の数を指標として設定しておくことで、むやみに高額なプランを契約することなく、自社に必要と思われる適正プランを選択できます。
このようにKPI設定は採用人数のみならず、コストや評価などの向上にも寄与します。

KPIの設定方法

一般的にKPIの設定方法は、次の通りです。

  1. 最終目標となるKGIを先に設定する
  2. 自社の例年の採用実績を把握する
  3. ➀・➁を基にKPIを設定する

➀最終目標となるKGIを先に設定する

採用におけるKGIは、一般的に次の3つから成ります。

  • いつまでに
  • どんな人材を
  • 何人採用

例を挙げると、次のような採用目標がKGIにあたります。

『4月までにBtoB営業経験のある20代後半から30代前半の営業職を2名採用する』

自社の採用計画に基づき、まずはKGIを設定しましょう。

➁自社の例年の採用実績を把握する

同じ営業職を採用するにしても自社と採用競合とでは、面接の回数や各プロセスにおける応募者の推移率、設定しているペルソナなど多くの要素が異なります。
そのためKPIを設定するために、自社の採用実績の把握が不可欠です。

➂➀・➁を基にKPIを設定する

最後に➀・➁を基にKPIを設定します。
採用におけるKPIと一口に言っても、設定できる指標は多岐に渡ります。

次の項目は、採用において多くの企業で設定されている指標の一例です。

  • 応募者数
  • 書類選考の通過人数
  • 各選考の参加人数
  • 各選考の推移率
  • 内定承諾率
  • 内定人数
  • 1人あたりの採用コスト
  • 入社後の部門・人事の評価結果
  • 在籍期間 など

全てのプロセスにおいてKPIを設定する必要はありません。
採用の質・歩留まり・人数など何を重視したいのかによって指標を上手く組み合わせましょう。

<数を重視した採用の場合>

質よりも人数を重視した採用の場合、次の3点をKPIの指標として定めましょう。

  • 応募者数(母集団の数)
  • 1人あたりにかかる採用コスト
  • 在籍期間

大量採用を検討している場合は、KGIを設定した後、自社のこれまでの採用実績に基づいた『応募者数(母集団の数)』のKPIを設定する必要があります。
「何となく〇人ぐらい」と感覚ベースで設定してしまうと、圧倒的に母集団人数が足りない・期日まで目標人数を達成できないなどの事態に陥ることも容易に考えられます。

また『1人あたりにかかる採用コスト』も重要です。
もちろん多額の費用を投下すればそれなりに効果は得られるかもしれません。しかし費用対効果を考えると健全ではありません。
“限られた予算内でいかにコストを抑え、多くの人材を採用できるか?”費用対効果を高めるためにも『1人あたりの採用コスト』の目標値設定は欠かせないでしょう。

さらに大量採用においては、候補者の見極めが甘くなり早期離職が起こりやすくなります。『在籍期間』を指標に置くことで、限られた時間・コストの中でもしっかり候補者を見極めできているのか振り返ることもできます。

<質を重視した採用の場合>

技術職や管理職など質を重視した採用をしたい場合、KPIとする指標は次の3点です。

  • 次面接への推移率
  • 面接通過率
  • 内定承諾率

質を重視する時は、書類選考や面接において通過率を狭めているケースが大半です。そのため、書類選考や各面接を通過した候補者がしっかり次の選考に推移しているか『次面接への推移率』をKPIの指標として設定し随時チェックしながら100%を目指す必要があります。

また質を求める場合は、適切に『面接通過率を』定める必要もあります。面接通過率が低くすると、当然質は高まります。しかし一方で最終面接まで残る候補者が少なくなってしまいます。反対に通過率を高めてしまうと質の低下に繋がります。

そして質を重視した採用では、既に候補者は複数の内定もしくは大手・一流企業の内定を保持していることも考えられます。そのため内定辞退も多数発生し得ることから、いかに自社の内定を承諾してもらえているのかを確認するため『内定承諾率』もKPIの指標として定めておき、高い推移率を目指す必要があります。

KPIを設定する際の注意

KPIを設定する時は、次の4点に注意しましょう。

  • 適切な設定個数を見極める
  • リアルタイムに把握できる指標をKPIに設定する
  • 達成可能な数値を設定する
  • “数字合わせ”になる設定にならないようにする

適切な設定個数を見極める

KPIは何個も指標を設ければ、効果が期待できるというものではありません。
自社の採用活動において、重要もしくは注力する必要がある指標に絞り込みましょう。

過去に筆者が採用コンサルタントとして採用の手伝いをしていた企業様の中に、必要以上にKPIの指標を設定してしまい、KPIにまつわる数字の管理が煩雑化している企業様もありました。

適性数以上の指標設定は、正しいデータが取れない・数字に振り回され現状が見えなくなるといった事態にもなりかねません。

HRアウトソース事業を主軸にする株式会社ウィズアスが行った「採用活動におけるKPI設定及びKPI達成への課題と解決策」と「利用している採用手法」に関する実態調査によると、採用活動におけるKPIの設定数は、次の通りだったそうです。

  • 1位:0~2個
  • 2位:3~4個
  • 3位:5~6個

参考:株式会社ウィズアス「採用活動におけるKPI設定及びKPI達成への課題と解決策」と「利用している採用手法」に関する実態調査

前項目で紹介した採用の目的に合わせ、自社のリソース・目的に適した数のKPIを設定しましょう。

リアルタイムに把握できる指標をKPIに設定する

KPIマネジメントの運用では、KPIの数字をリアルタイムに把握できることが前提です。
数字の把握に時差が生じる・数字の収集に時間がかかる指標をKPIに設定しても、効果的なKPIマネジメントは期待できません。

達成可能な数値を設定する

期日までに達成可能な数字を設定することも大切です。

理想ばかりを追い求めあまりにも高い指標を掲げてしまうと、採用メンバーのモチベーション低下や闇雲な達成行動が起こる懸念も考えられます。
達成できる根拠をもとにKPIを設定するよう心がけましょう。

“数字合わせ”になる設定にならないようにする

KPIを設定する際は、単なる“数字合わせ”にならないように留意する必要があります。

KPIを設定した時点で既に、期日・予算・人員の兼合いで達成が難しいと予測されるケースも考えられます。
このようにKPIを設定することにより採用活動の無理や矛盾が見つかり、目標達成に向けて採用プロセス・予算・人員・手法を見直すことができます。

しかしKPIの数字を達成するだけにこだわり、むやみに採用プロセス・予算・人員・手法を変えてしまうと、単なる“数字合わせ”になってしまいます。
このようにKPIを意識するあまり、事前に定めたKGIや採用目的がブレてしまう危険性もあります。

KPIの数字を達成するために採用プロセスや手法等を変更する場合は、必ずKGIや採用目的を見据えた上で検討するようにしましょう。

KPIの運用時のポイント

KPIは設定して終わりではありません。正しい方法で運用してこそ効果を発揮します。

人事・採用コンサルにおいて100社以上の企業様の採用を見てきた筆者の経験から、特に次の2つの項目を意識・徹底することを心掛けて頂きたいと思います。

  • リアルな数字で管理する
  • PDCAサイクルを回しる続ける

リアルな数字で管理する

先述の『KPIを設定する際に意識すべきポイント』でもお伝えしましたが、KPIマネジメントでは、KPIもしくは付随する数字をリアルタイムに管理することで初めて適切な運用ができるようになります。

数字が常に最新になっている状態が理想です。
人事のリソースだけで対応が難しい場合は、管理ツール・RPA・代行なども積極的に活用すると良いでしょう。

PDCAサイクルを回し続ける

KPI設定後は、シーンや状況に応じてPDCAを回し続けることが肝要です。
例え適切にKPIが設計・設定されていたとしても、その後の運用においてPDCAが行われないと、KPIマネジメントの確実な効果は得られません。

例えば、採用活動においてKPIと著しく乖離が生じるケースもあるでしょう。そのような状況において、直ちに原因を突き止め課題を洗い出し、改善に繋げることで最終的に目指すKGIの道筋が軌道修正できます。

このように何か課題が生じた時は、即座に改善に取り組むことがKPIマネジメントのポイントです。
下記は採用活動でよく起こる、実際の採用活動とKPIが乖離しているパターンです。

<内定承諾率が低い>

■考えられる原因

・内定者の不安や懸念を払拭しきれていない

・入社意欲が低い

・採用競合との差別化ができていない

■対策

・選考プロセスでカジュアル面談を設定し企業魅力を伝える

・懇親会等を導入し、不安や懸念払拭に努める

・内定通達時に採用理由を伝え、入社後どのように活躍できるのか伝える

<応募率が低い>

■考えられる原因

・魅力的な訴求ができていない

・掲載する媒体にミスマッチが生じている

・企業ブランド力が低い

■対策

・採用したい人材が活用している媒体を見極める

・掲載原稿の見直しを行う

・企業ブランディングに注力する

<推移率が低い>

考えられる原因

・面接官の印象が良くない

・面接で企業魅力を伝えきれていない

・面接後の連絡(日程調整連絡)が遅い

対策

・面接官の印象を統一化する

・面接の目的を定める

・面接後のフローをマニュアル化する

KPIの設計・設定は、PDCAサイクルのPlan(計画)に過ぎず、その後の改善・振り返りも必要だということを念頭に入れておきましょう。

採用方法におけるKPIの設定・運用方法 まとめ

採用活動においてもポイントごとにKPIを設定することで、最終目標(KGI)までの最短ルートが明確になります。

最終目標だけの設定や目的・目標が曖昧な状態で採用活動を進めてしまうと、なかなか入社まで繋がらない・早期離職が頻発する・費用対効果が悪いなどの害悪が生じてしまいます。
まずは、KGIを設定した上で自社の採用実績に基づき、適切な指標を設定しましょう。