【事例あり】採用ブランディングを成功に導く6つの手順|知っておきたい3つのコツ

人材獲得競争が激化する中で、採用したい人材に選ばれるために自社のブランド力を高める『採用ブランディング』は、採用活動において欠かすことのできない戦略の1つになりつつあります。
採用ブランディングは、母集団形成の量充実に繋げるだけではなく、企業理念やカルチャーにフィットした人材からの応募を募ることができます。また早期離職や選考辞退の抑制にも一役買うことでしょう。

しかし自社でも採用ブランディングが必要と感じつつも「どのような手順で進めるべきか」「具体的な成果が得られるのか」と、具体的な手順やコツ、どのような成果が期待できるのか分からない企業・人事ご担当者様も多いかと思います。

そこで今回は、150社以上の採用をみてきた筆者が、採用ブランディングを始める際の手順や成功のコツ、成功企業の実例をご紹介します。

  • 採用ブランディングを行っているものの、思うような成果・効果が得られていない
  • 他社の成功事例を知りたい
  • 採用ブランディングを進める上で留意・意識すべきポイントが分からない

上記に該当する、企業・人事ご担当者様はぜひご一読ください。

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採用ブランディングを行う手順

採用ブランディングを行う手順は次の通りです。

  1. 採用ブランディングのゴールを課題から逆算し設定する
  2. 自社の求める人物像・ペルソナを明確にする
  3. コンセプトメイキングを行う
  4. 発信方法・媒体の選定
  5. 運用ルールの策定
  6. 振り返り・PDCAを回す取り組みを行う

採用ブランディングの目的や方法によって手順は多少異なりますが、今回は筆者が採用支援をする際にベースにしている手順に則り、準備から開始までステップごとに紹介します。

➀採用ブランディングのゴールを課題から逆算し設定する

まずは採用ブランディングのゴールを設定します。
その際に、自社の採用課題・採用活動とリンクさせ、「採用ブランディングにどのような成果を求めるのか」を明確にしておくことが肝要です。

例えば母集団が集まらないという課題に対しては、企業認知を高めたり応募したくなるイメージ作り・発信が必要です。また選考・内定辞退、早期離職が課題に挙がっている企業においては、自社の目指す姿に共感する人材からの応募を募れるような取り組みが求められるでしょう。

➁自社の求める人物像・ペルソナを設定する

次に“どんな人に情報を届けたいのか”、具体的な人物像を設定します。
まず『自社の求める人物像』を定め、続けてペルソナを設定していきます。

ペルソナを設定する際は、経営層や現場メンバーにもヒアリングを実施しましょう。採用部署・現場・経営者全ての視点から採用したい人物を具体化することで、経営戦略と採用計画のズレ、現場メンバーの求める人物との相違も回避できるでしょう。

またターゲットを絞り込むことで、軸のあるブランディング戦略推進が期待できます。

➂コンセプトメイキングを行う

求める人物像・ペルソナの設定に続き、採用ブランディングの中核となるコンセプトメイキングに移ります。

採用コンセプトはシンプルながらも、その企業のイメージを一言で言い表せるものが望ましいでしょう。どこかで耳にしたことがあるようなフレーズ・ありきたりな言葉は、独自性がなく他社と差別化を図ることができません。また印象にも残りづらいでしょう。

採用コンセプトを考案する際は、企業理念・経営者の思想・事業の方向性や在り方などベースに、独自のストーリーを組み込むことを意識し、オリジナル性の高い“一瞬で惹きつけるフレーズ”を創り上げることがポイントです。
もちろん前工程で定めたターゲットに刺さるコンセプトであることも、忘れてはなりません。

本工程は、採用ブランディングの軸となるだけではなく、候補者の視点や企業イメージも意識しなければなりません。
またキャッチコピーの制作にはマーケティング・セールス・ブランディング知識が必要です。外部やプロに制作への依頼も視野に入れながらコンセプトを固めましょう。

採用コンセプトは、候補者の関心や応募率を左右するだけではなく、応募者の属性や質に変化をもたらすこともあります。
そのためコンセプトメイキングを定める際は、あらゆる企業の採用コンセプトを参考にすることをおすすめします。

下記に紹介する企業は、採用ターゲットが明確な企業、企業イメージに沿った採用コンセプトを定めている企業です。

<株式会社三井住友銀行>

『挑戦者よ、世界を揺らせ』

画像引用:株式会社三井住友銀行 2024年採用サイト

<アサヒビール株式会社>

『挑戦の先には、いつも最高の乾杯がある』

画像引用:アサヒビール株式会社 採用サイト

<吉本興業ホールディングス株式会社>

『一笑 一勝 一翔 一商 一照 一匠 一Show 一生 面白い仕事』

画像引用:吉本興業ホールディングス株式会社 採用サイト

➃発信方法の決定

採用ブランディングを目的に情報発信を行うのであれば、採用サイトかSNSツールがおすすめです。
その理由は次の3点です。

  • 自由な発信ができる
  • デザインや表現をリアルタイムで更新しやすい
  • 転職潜在層にもアプローチできる

採用サイト・SNSツールは、発信の柔軟性が高く、個社ごとに特性や魅力を発信しやすいというメリットがあります。
またナビ媒体のようにデザインや表現に規定が設けられておらず、更新に制約がない点も採用ブランディングを推進する上で利点に感じるでしょう。

筆者の肌感として、最近は動画メディアを活用する企業も増えてきました。
文章では表現しきれない、会社の雰囲気や社員の様子といった企業のソフト情報を伝えやすく、高い共感を引き出したい時に有効です。

またスタートアップ企業を中心に、マーケティングやブランディングの観点でプレスリリース配信サービスを活用する流れも生まれているようです。
即戦力を求める中途採用においては、事業内容や企業の取り組みに触れる記事は、入社後の活躍イメージを描かせる材料にもなり得ます。

採用ブランディングの目的・対象・コンセプトに沿って発信方法を検討していきましょう。

➄運用ルールの策定

ブランディング浸透に向けて、運用ルールの策定は欠かせません。
その理由は、採用ブランディングは「採用サイトを作ったら完了」「SNSを立ち上げたから終わり」というものではないからです。長期的かつ継続的な情報発信を続けてこそ、確実な成果が表れます。

情報が古いままだと、候補者に対してネガティブイメージを植え付けかねません。
意外にも戦略推進において、ルールを策定していないケースは珍しくありません。
多くの企業の採用を支援してきた筆者の視点からも、採用ブランディングを始めるにあたって「事前の社内ルール策定は欠かせない」と断言できます。

⑥振り返り・PDCAを回す取り組みを行う

一連の採用活動が完遂したタイミングで振り返りを行います。
振り返りたい項目は、次の5つです。さらに自社の採用課題や目的に応じて振り返り項目を設定していきましょう。

  • 採用コンセプトは届いたか、選社において重要視したか
  • 事業や方向性は理解されたか
  • 母集団の数・質
  • 選考・内定辞退率
  • 応募までの導入ルート

振り返る時は、内定者や選考・内定辞退者の意見も取り入れましょう。最も自社の採用ブランディングに触れてきた求職者だからこそ、有益かつ次回に活かせる情報が得られるかもしれません。

振り返り内容を基に浮き彫りになった課題からPDCAを回し、次の採用活動のアップデートを図りましょう。

採用ブランディングを成功させる3つのコツ

採用ブランディングを行う際は、ぜひ次に紹介する3つのコツを意識してみてください。

  • ペルソナを意識する
  • 一貫性を心がける
  • 採用ブランディングのゴールの延長線上に採用活動のゴールを定めておく

どんなに手順に則り採用ブランディングを推進したとしても、本項目で紹介するコツが抑えられていなければ、成果が表れるまで必要以上に長い時間を要してしまいます。
場合によっては、徒労に終わってしまう可能性もあるでしょう。

ペルソナを意識する

採用ブランディングの大きな目的は、求める人材を獲得することです。
そのためには、ペルソナを意識した運用は欠かせません。

ブランド構築の理論を応用してコンサルティングとクリエイティブを行う、むすび株式会社がこれまで採用業務に関わったことがある全国のビジネスパーソン640名を対象に行った、『採用ブランディングに関する意識調査』によると、『あなたが思う「採用ブランディング」の構築や実践方法として、効果的だと思うものを教えて下さい。』という問いに対し、ターゲット人材の明確化(48.8%)が1位の結果となっています。

参考:むすび株式会社『採用ブランディングに関する意識調査』

本データからも実際に採用に関わったビジネスパーソンの所感からも、ターゲット人材の明確化やターゲット人材を意識することは、採用ブランディングの推進において非常に重要であることが伺えます。

筆者がこれまで採用支援した企業の中には、「採用ターゲット」と「消費者ターゲット」を混同している企業もありました。これは極端な例ですが、採用目的から外れた対象に情報発信を続けても自社にマッチした人材からの応募を募ることはできません。

またペルソナを意識することで、どのような情報・どんな媒体を使って発信すれば採用したい人材の目に留まるのかを逆算しやすくなります。母集団の質が向上するだけでなく、自ずと採用活動の効率も高まるでしょう。

一貫性を心がける

採用ブランディングで気を付けたい点は、候補者が目にするツール・媒体ごとに見た目・中身がチグハグにならないことです。
どのツール・媒体においても一貫したコンセプトのもと、記事や写真が掲載・公開されているか改めて確認しましょう。

また見た目の統一感も重要です。
あるツールではPOPな印象を与えるビジュアルを呈しているにも関わらず、採用サイトでは固い印象を受けるようでは統一感があるとは言えません。
ツール・媒体ごとに内容や印象が違ってしまっては、候補者はその企業の本質や理念を掴みづらく応募意欲が減退してしまいます。

企業側が伝えたいことだけを発信することにならないよう、一貫性のある採用ブランディングを推進しましょう。

採用ブランディングのゴールの延長線上に採用活動のゴールを定めておく

採用ブランディングを行う際は、『目先の課題』に対してではなく『採用活動のゴール』にそって運用を行うことが大切です。

例えば採用ブランディングでターゲットに刺さるコンセプトの設定が出来たとしても、採用ブランディングのコンセプトがミスマッチを生む要因になってしまっては逆効果です。

筆者が採用を支援した企業の中に、飲食や工場など現場が中心となる業界にも関わらず、スーツ姿の社員しか見せないという事例がありました。
「現場感を出すことで、エントリーを見送られるのではないか」という懸念から採用ブランディングに現場感を組み込まないようにしていたようです。しかし採用後の現場配属時にミスマッチを起こし、早期離職に拍車をかける結果になっていました。

これでは採用ブランディングの母集団の量においては成功と言えるかもしれませんが、採用活動の成功からは遠ざかってしまいます。
本ケースでは、「なぜそこまで現場の仕事に熱意や情熱を注ぐのか」を伝え、応募したくなるような魅力付けと応募時と現実とのギャップを無くすブランディングが求められます。

このように採用活動のゴールの道筋の中に採用ブランディングのゴールを定め、採用ブランディングと採用活動が個別に運用されないよう意識することがコツです。

採用ブランディングのメリット

採用ブランディングを行うことで、次のようなメリットが得られます。

  • 企業認知の向上を図れる
  • 候補者をファン化できる
  • ソフト情報を発信しやすく、採用競合企業との競争に巻き込まれにくい

企業認知の向上を図れる

企業の認知は、採用活動の成否に大きく関わります。
その点、採用ブランディングを推進することで自社の認知が広がり、より多くの人に情報を届けられるようになります。

自社の求めるスキル・経験を持ち、さらに企業のビジョンに共感してくれる人材に出会える・選ばれる可能性も高まります。
費用を抑えて自社の認知を広められる採用ブランディングは、特に中小企業・ベンチャー・不人気業界の企業にとって採用活動の成功に大きく貢献するでしょう。

候補者のファン化できる

採用ブランディングによって企業ブランドが確立されれば、価値観・社風・ビジョンなどに共感する人材がファンとなり、似たような人材が集うようになります。
さらにファンによって自動的に情報が拡散・シェアされるようになれば、雪だるま式にファンが増えていくでしょう。

採用ブランディングにおける『ファン』は『応募者候補』でもあります。
転職潜在層にも情報を発信できるため、本格的に転職活動を行う際に候補企業に選ばれる可能性が高く、採用活動を優位に進めていくことができるでしょう。

ソフト情報を発信しやすく、採用競合企業との競争に巻き込まれにくい

採用ブランディングでは、自社の採用したい人材に響くようなメッセージや情報を発信します。そのため、必然的に他社と発信する内容が異なり、業界や業種など大きなくくりではなく『その企業が良い』『この企業で活躍したい』と個社に注目を集められるようになります。

結果、職種・企業規模・雇用条件などで比較されることがなくなり、人材獲得競争に巻き込まれにくくなります。

採用ブランディング実例

最後に採用ブランディングを行い、成果を挙げた企業を紹介します。
筆者の採用支援経験から、ぜひ参考にしていただきたい3つの企業をピックアップ致しました。

日本マクドナルドホールディングス株式会社

画像引用:日本マクドナルドホールディングス株式会社 採用サイト

日本マクドナルドホールディングス株式会社は、2016年から本格的な採用ブランディングを実施しています。
「マクドナルドで働く良さを世に広める」を採用コンセプトに掲げる同社では、就業イメージが湧きやすいようにクルーの成長を描いた約1分半のアニメーションや主婦・シニア・学生で活躍しているクルーのライフスタイルを伝えるムービー「マッククルーストーリー」を制作し、マクドナルド公式チャンネルで公開しています。

さらに能動的な仕事の推進やチャレンジする人を評価するなどの意味が込められた、創業者レイ・A・クロックが残した「Up to you」という言葉を求職者にきちんと伝えることで、カルチャーにフィットした人材の応募率を高めました。結果として、質の担保・リテンション(退職防止)にも貢献しています。

採用人数が毎年増加傾向にある同社ですが、採用市場が厳しい中でも一定の成果が現れているそうです。
参考:株式会社 PR TIMES『PR TIMES MAGAZINE』
参考:Indeed Japan 株式会社『オウンドメディアリクルーティング ジャーナル』

関西電力株式会社

画像引用:関西電力株式会社 採用サイト

関西電力株式会社は『挑む。関電』という採用コンセプトを掲げ、あらゆる媒体・ツールにおいても『挑む』というワードを軸に採用ブランディングを推進しています。

YouTubeサイト「関電まる見え!チャンネル」をはじめ、採用サイトには挑むフィールド・挑む社員・挑むプロジェクトなど、現場や働く社員の様子を積極的に発信し、候補者への企業認知やファン化を確実に積み重ねています。

その成果は、毎年着実に採用人数を増やしている数字にも表れています。

参考:関西電力株式会社『2022年度採用計画について』

サイボウズ株式会社

画像引用:サイボウズ株式会社 採用サイト

Great Place to Work® が実施した『2021年版 日本における「働きがいのある会社」ランキング 中規模部門(従業員100-999人)』では2位に選出、同ランクングにおいて8年連続でランクインしている同社ですが、2005年の離職率は28%と高い離職率が課題でした。

高い離職率の改善に向けて、「100人いたら100通りの働き方」をコンセプトに掲げ、採用ブランディングによって、候補者に対し「働きやすそう」「個性尊重」「自由」という企業イメージの定着を図りました。
イメージ定着には、オウンドメディア(サイボウズ式)もフル活用しています。採用ブランディングのコンセプトに忠実な情報発信を行っている様子が伺えます。

メンバーそれぞれが望む働き方を実現できるよう努め、“チームワークあふれる社会を創る”という理念に共感する人材への採用に努めた結果、離職率を3-5%まで下げることに成功しています。

参考:株式会社サイボウズ 企業・IR『ワークスタイル』

採用ブランディングの手順とコツ まとめ

労働者の意向変化や人材流動の動きが激しくなる中、単なる人集めだけでは組織の運営は成り立たなくなってきました。より強い組織・あらゆるシーンで選ばれる組織を創るためには、ビジョンに共感し共に切磋琢磨・成長できる人材の登用が求められています。
その中で採用ブランディングは、組織の成長・事業の成功を実現する上で欠かせない戦略の1つになりつつあります。

先述のむすび株式会社『採用ブランディングに関する意識調査』内の、『企業の採用活動に「採用ブランディング」が必要だと思うか』という質問に対しては、83.8%が「必要だと思う」と回答していました。
本データからも多くの企業・人事ご担当者様が採用ブランディングの必要性を感じていることが伺えます。

採用ブランディングは、一朝一夕で目に見える成果を得られる施策ではありません。しかし目的とターゲットを明確に定め、確実な運用を行いPDCAを回し続けることで、中小企業や不人気業界でも確かな成果を見込める戦略です。

採用に課題を感じているのであれば、ぜひ新たな戦略の1つとして自社の採用活動に取り入れてみてはいかがでしょうか。 本記事が貴社の採用成功の一助になれば幸いです。