LinkedIn(リンクトイン)は、世界200カ国8億5000万人以上のユーザーが利用する世界最大級のビジネスSNSです。
2003年にアメリカでリリースされて以降、日本でも着実にユーザー数を伸ばしています。
ビジネスに特化したSNSだけあり、求人広報活動や求人情報の掲載、スカウトメール配信なども行うことができます。
このように一連の採用活動をLinkedIn1つで完結させることができるため、近年日本でも採用ツールの1つとして活用する企業も増えてきました。
既にアメリカをはじめとするLinkedInが浸透している海外諸国では、LinkedInを用いた採用が一般化しており、中途採用のみならず新卒採用においても高い効果を発揮しています。
しかし一方でFacebookのビジネス版と言われているものの、既に日本に馴染んでいるFacebook・Instagram・YouTubeなどの他のSNSと比較して、日本への浸透率はまだまだ高いとは言えません。
そのため、高い有効性・コストパフォーマンスを発揮すると耳にしていたとしても、導入に踏み切れない企業・人事ご担当者様も多いかと思います。
そこで本記事は、150社以上の採用をみてきた筆者が、LinkedInでスカウト採用を行う方法や費用をはじめ、LinkedInでスカウトメールを送るメリットや運用のコツをお伝えします。
- LinkedInでスカウト採用を運用する方法を知りたい
- 多様なスカウトツールや媒体がある中でLinkedInを用いるメリットを知りたい
- LinkedInでスカウト採用を行う際のポイントを学びたい
上記に該当する、企業・人事ご担当者様はぜひご一読ください。
LinkedInでスカウトメールを配信する方法・プラン
まずはLinkedInのスカウトメール配信機能について説明致します。
LinkedInでスカウトメールを配信する方法
LinkedInでスカウト採用を運用する(スカウトメールを配信する)際は、LinkedIn内で繋がりのないユーザーに対してもメッセージを送れる『InMail』と呼ばれる機能を利用します。
InMailを利用する方法・料金
他のSNSと違い、LinkedInで繋がりのない人にメッセージ(InMail)を送付する場合は、Premiumプランにアップグレードする必要があります。
2023 年4月時点、Premiumプランは次の4種類が用意されており、プランに応じて月々配信できるInMailの数・料金・目的が異なります。
- Premium Career – 内定を獲得し、キャリアアップに繋げる
- Premium Business – 具体的なビジネスインサイトを得て、事業をさらに拡大する
- Sales Navigator – 顧客をつかむ
- Recruiter Lite – 人材を発掘し、採用に繋げる
採用を目的とする場合は、『Recruiter Lite』を選択しましょう。
Premium Career | Premium Business | Sales Navigator | Recruiter Lite | |
---|---|---|---|---|
料金 | $29.99 | $59.99 | $79.99 | $119.95 |
InMail数 | 5 | 15 | 50 | 30 |
目的 | 就職・転職 | ビジネス | 営業 | 採用 |
『Recruiter Lite』と『LinkedIn Recruiter』の違い
先述の通り、LinkedInで採用を行う場合は、『Recruiter Lite』を選択する必要があります。
Recruiter Lite はLinkedInを採用ツールとして活用できるプランであり、主に少人数の採用を目的にしている中小企業向けにサービス提供されています。
初回のみ30日間の無料トライアルを利用できるため、試しに使ってみたいという人事ご担当者様は登録の上、使い勝手や仕様を確認してみると良いでしょう。
Recruiter Liteでは機能やスカウト数が物足りないという企業は、『Recruiter(法人企業向け)』を選択することも可能です。
Recruiter(法人企業向け)は、中堅企業・エンタープライズ企業・人材紹介会社向けの人材開拓ソリューションです。Recruiter LiteとRecruiter(法人企業向け)ではそれぞれ料金・機能・InMail数が異なるため、自社の採用計画に応じて選択しましょう。
Recruiter Lite | Recruiter | |
---|---|---|
料金 | $119.95/月 | 要問合せ |
InMail数 | 30/月 | 150/月 |
InMailの一括送信機能 | なし | 一度に最大25件のメッセージ |
LinkedInネットワーク へのアクセス | 3次のつながりまで | ネットワーク全体へのアクセス |
検索フィルタリング | 20件以上のフィルター | 40件以上のフィルター (現在の会社/ポジションでの勤続年数や言語などの詳細フィルターを含む) |
候補者検索アラート | 最大10件 | 最大50件 |
候補者へのタグの追加機能 (絞り込みとカテゴリー分類のため) | なし | あり |
レポート機能 | ・InMail分析レポート ・求人統計データレポート | ・InMail分析レポート ・求人統計データレポート ・Recruiter使用状況レポート ・パイプライン統計データレポート ・全契約プランのレポートとカスタムレポート |
LinkedInでスカウト採用の効果を高めるコツ
LinkedInでスカウト採用の効果を高めるためには、次の3つの項目を意識しましょう。
- LinkedInに登録しているユーザー層の属性・特徴を理解する
- 人事担当者は個人ブランディングにも注力する
- 会社ページ(キャリアページ )を作り込む
LinkedInに登録しているユーザー層の属性・特徴を理解する
スカウト採用のみならず、LinkedInを採用ツールの1つとして用いる場合、登録しているユーザー層を理解しておくことが肝要です。
LinkedInに登録しているユーザーは、優秀な人材・層が多く、ビジネス英語に長けている人材はもちろん、エグゼクティブもしくは近いポジションの層も多数登録しています。
一般的な転職サイトや日本で主流のSNSサイトで出会えない優秀な人材・層にアプローチできる魅力がある一方で、LinkedInの登録者層を理解していないと採用やアプローチにミスマッチが生じてしまいます。
採用担当者は個人ブランディングにも注力する
LinkedInの会社ページは、個人アカウントに紐付けられます。
そのため、人事ご担当者様は個人アカウントのブランディングにも力を入れることをおすすめします。
他のSNSでも同様ですが、人事担当者個人のブランディングを強化しファンを付けておくことで、選考推移率や内定承諾確度も高まります。
特に企業ブランドや認知度が低い企業は、LinkedInでの採用ブランディング・採用広報に力を入れると共に人事担当者もしくは採用チームのブランディングにも注力しましょう。
キャリアページ(会社ページ)を作り込む
LinkedInで採用活動を行う際は、キャリアページを作り込みましょう。
LinkedInでは無料でキャリアページを作成でき、ページ内で採用情報の発信や求人票の掲載をすることができます。
InMail(スカウトメール)を受け取った転職希望者(もしくは転職潜在層)は、LinkedIn内で情報収集から応募まで完結できます。
LinkedIn内のキャリアページを作り込むことで、転職希望者の情報収集の工数による離脱を防止できます。そのため企業情報・採用情報・募集要項が薄い企業は、情報に厚みを持たせましょう。
LinkedInでスカウト採用を行うメリット
LinkedInでスカウト採用を行うメリットは、主に次の5つです。
- 200カ国8億5000万人のユーザーにスカウトメールを送信できる
- 返信率の高さに優れている
- SNSの手軽さとビジネスの本気度が掛け合わさっている
- 優秀層・エグゼクティブ層採用の登録が多い
- ミレニアル世代のユーザーが多い
国内にも登録者にスカウトメールを送れる機能を備えた媒体・ツールは数多く展開されています。
その中で敢えてLinkedInを用いてスカウト採用をするメリットを理解しておくことで、LinkedInでのスカウト採用をより効果的に運用できるハズです。
200カ国8億5000万人のユーザーにスカウトメールを送信できる
LinkedInでスカウト採用を運用する最大の利点は、候補者となる対象の数です。
LinkedInは、約300万人の日本人ユーザー登録、世界200カ国8億5000万人のユーザー登録を誇ります。
ハイクラス転職を謳うビズリーチのスカウト可能会員数は190万人(2023年1月末時点)、LinkedInと同じくビジネスSNSと言われているWantedlyのスカウト可能会員数は350万人(2022年7月時点)です。
国内のスカウト機能を備えている他の媒体と登録者の数を比較しても、決して劣ることはありません。さらに全世界のユーザーに向けて情報を発信できる点は、国内の他の媒体に勝る強みと言えるでしょう。
リファラル転職のプラットホームを運営する株式会社YOUTRUSTが行った「求職者・候補者の転職意識の実態調査」では、今すぐ転職したいと考える転職顕在層は、労働者の1割にも満たないという結果になりました。
一方で「転職を検討中」「良い案件があれば転職したい」と答える転職潜在層は約6割にも上り、採用競争激化する市場においては、いかに転職潜在層にも自社の魅力をアピールできるか否かが採用成功を左右します。
画像引用:株式会社翔泳社『HRzine』
その点、LinkedInはSNSに属するツールであり、転職サイトや転職エージェントではありません。そのため、機会に恵まれたり良い条件の企業との出会いがあれば転職を検討する転職潜在層に該当するユーザーが数多く登録しています。
LinkedInを活用すれば、より幅広い対象に対して採用情報の発信や魅力訴求を行うことができるでしょう。
登録者数参考:ビズリーチ
登録者数参考:ウォンテッドリー株式会社『PR TIMES』
返信率の高さに優れている
LinkedInは、返信率の高さを評価する声・データも多く見聞きされます。
スカウト採用において、多くの企業で課題に上がる“返信率”ですが、LinkedInのInMailを用いたスカウトメールの返信率は11%〜23%であるという調査結果(IT系人材に送付した場合)もあります。
返信率は、スカウト採用の成否を大きく左右します。
その点、返信率の高い媒体はユーザーの意欲や意向も高いと推察できます。
活発的で情報のキャッチアップに熱心なユーザーが数多く登録するLinkedInでは、採用活動においても良好な反応を示してもらえる期待も高いでしょう。
SNSの手軽さとビジネスの本気度が掛け合わさっている
LinkedInは、SNSの手軽さとビジネスの本気度が掛け合わさった特殊なSNSです。
SNSの1種であるためにユーザーの登録敷居は低く、気軽に登録しLinkedIn内でビジネスコミュニケーションを図ることが出来ます。
一方で企業視点においては、LinkedInでは実名・顔出しの登録が求められます。 まさにビジネスに特化したSNSであり、匿名性の高いInstagram・Facebook・Twitter・YouTube等とはリアル度が異なります。 さらに登録者は他のSNSと比較して、ビジネス感度が高い傾向が見られます。
Facebook・Instagram・Twitter・YouTubeなどを用いてSNS採用に取り組む事例も多く公開されていますが、どのSNSもプライベート感が強く、「ビジネスシーンで活用しづらい」「実名が分からない」「職歴やスキルが不明」などの使いにくさもあります。
その点LinkedInは、ビジネスに特化したSNSであるが故にユーザーの目的も他のSNSとは毛色が異なります。
先述の通り、優秀な人材も多数登録しているため、企業が欲しがる市場価値の高い人材と出会える可能性が高い点も魅力の1つです。
企業側もLinkedInの特性を理解し、SNS界隈の中でのLinkedInのポジションを見極めることで、より効果的な採用活動に繋げることができるでしょう。
優秀層・エグゼクティブ層の登録が多い
LinkedInはビジネスに特化したSNSだけあり、優秀層・エグゼクティブ層採用の登録が多い傾向にあります。
転職サイトではなかなか繋がることのできない優秀層・エグゼクティブ層と繋がれる可能性が高く、今まで出会えなかった人材とコンタクトを図れる機会がグっと増えるでしょう。
また優秀層・エグゼクティブ層の採用には大幅なコストがかかりますが、その点においてもLinkedInは成果報酬制ではないため、人材紹介などを利用するよりも大幅に採用コストを下げることができます。
ミレニアル世代のユーザーが多い
LinkedInに登録しているユーザーの年齢層は、24〜35歳のミレニアル世代が中心です。
採用活動において登録者の属性から媒体やツールを選定することは、非常に重要です。
ミレニアル世代のユーザーが多いということは、その分効率的にターゲットとの接触を図れるようになります。
ミレニアル世代の採用に注力しているのであれば、ミレニアル世代のユーザーが多いという点は大きなメリットになるでしょう。
引用:株式会社ガイアックス『主要SNSユーザー数データ資料』
LinkedInのスカウト採用 まとめ
日本のみならず世界中で広く利用されているLinkedInは今後もますます日本での規模を拡大していくと予想されます。
またご紹介したLinkedInの機能を鑑みても、採用ツールの1つとしてメリットが多く、ぜひとも注目頂きたいSNSです。
LinkedInを活用し求人情報を拡散したり、LinkedInのInMailを利用し自社にマッチしそうな候補者にスカウトメールを送付することで、採用コストを抑えつつ今まで出会えなかった優秀な人材に出会える・採用できる可能性が拓けてくるかもしれません。
採用手法が多様化する中で、近い将来LinkedInが求人広告や人材紹介に代わる主な採用手法になる可能性も考えられます。
LinkedInを活用した採用活動に興味を持っている、検討しているという企業・人事ご担当者様は、まずLinkedInの特性や性質を理解し、自社の採用方針や獲得したい人材層とマッチしているか検討してみましょう。
もし他の採用手法よりも有益性の高さが見込まれる可能性があるのであれば、導入に向けて前向きに検討してみる価値はあるでしょう。